CORE SPEC
公開: 2026.05.16
COLUMN — 技術解説

ゲーム中、PCの中では
何が起きている?

GPU×CPU——16.6ミリ秒の攻防を、実測データで図解する。

GPU×CPUの役割分担を図解

「GPUさえ良ければ快適」——その思い込みが、あなたのPCの性能を30%以上ドブに捨てているかもしれません。

RTX 5090という50万円超の怪物GPUを積んでも、CPUが追いつかなければGPU使用率はわずか52%。逆にCPUだけハイエンドでも、レイトレーシングの膨大な計算はCPUの数千倍の効率を持つGPUでなければ処理できません。

本記事では、1フレームが画面に届くまでの「16.6ミリ秒の攻防」を実測データで分解し、GPUとCPUのバランスが取れた「正解の構成」を用途別に提示します。


1. 1フレームが画面に届くまで——16.6msのリレー

ゲームで「60fps」が出ている時、PCの中では1秒間に60回、CPUとGPUの間で精密なリレーが行われています。1フレームに許された時間はわずか16.6ミリ秒。この中でCPUとGPUが「何を」担当しているのかを分解します。

CPUの仕事:「世界のルール」を計算する

GPUの仕事:「映像」に変換する

  1. 頂点シェーダー:3Dモデルの頂点を画面上の2D座標に変換
  2. ラスタライズ:ベクターデータをピクセルの集合に変換
  3. ピクセルシェーダー + レイトレーシング:各ピクセルの色・質感・光の反射を物理計算
  4. DLSS 4:AIが過去フレームから中間フレームを生成し、滑らかさを劇的に向上

MSFS 2024:1フレームのタイムライン分析

Core i7-14700KF + RTX 5070 Ti環境での実測データです。

処理フェーズ 担当 時間 (ms) 内容
入力 / スクリプトCPU2.5ユーザー入力、スクリプト実行
AI / 交通ロジックCPU4.0航空機AI、地上車両の挙動
物理 / 衝突判定CPU3.5機体の物理挙動、気流計算
ドローコール生成CPU4.0膨大な地形の描画命令
ジオメトリ / ラスタGPU2.03Dモデル配置、ピクセル変換
シェーディング / RTGPU6.5質感、雲、ライティング
DLSS / 出力GPU1.1AIフレーム生成、画面出力
合計混成23.6≒ 42fps(CPU側が律速)

💡 なぜGPUが速くても42fpsしか出ないのか?

CPU側の合計が14.0ms、GPU側が9.6ms。CPUの処理が終わらなければGPUにバトンが渡りません。GPUがいかに高速でも、14.0ms(≒71fps)が上限。これが「CPUボトルネック」の正体です。


2. CPUボトルネック——50万円のGPUを殺す「中位CPU」の罠

RTX 5090は前世代比20〜50%の性能向上を果たしましたが、この性能を引き出すにはCPU側にも相応の「命令発行速度」が必要です。

実測データ:RTX 5090にCore i5を組むとどうなるか

解像度 CPU GPU使用率 平均fps 状態
1080pRyzen 9 9950X3D85%310軽微なCPU制限
1080pCore Ultra 5 250K52%195深刻なボトルネック
4KRyzen 9 9950X3D99%115GPUフル稼働
4KCore Ultra 5 250K92%108ほぼGPU限界

1080pではGPU使用率がわずか52%。50万円超のRTX 5090の性能の半分が眠っている状態です。Core i5のドローコール生成速度が限界に達し、GPUは「次の命令」を待ち続けています。

なぜ「4Kではボトルネックが出にくい」のか?

ただし2026年はRTX 5090があまりに高速なため、4KでもCPUボトルネックが発生するケース(MSFS 2024やRTSゲーム)が増加しています。


3. AI推論の「帯域の壁」——GPUだけでは動かない

ローカルLLMや画像生成AIでは、GPUのTensorコアが演算の主体ですが、データの流れがパフォーマンスの真の規定打です。

構成 モデル 接続 推論速度 ボトルネック
RTX 5090 (32GB)Llama 3.1 70B Q4VRAM内完結45 TPSGPUメモリ帯域
RTX 5070 Ti (16GB)Llama 3.1 70B Q4PCIe→RAM1.8 TPSPCIe/メモリ帯域

VRAMに収まらないモデルをメインRAMにオフロードすると、推論速度は1/25に低下。DDR5の帯域(約80GB/s)はGPUメモリ(RTX 5090で約1.8TB/s)の22分の1しかないためです。ローカルLLMの詳しいスペック要件はこちら


4. クリエイティブソフト——「GPU全振り」が失敗するケース

After Effects:シングルスレッドの絶対領域

AEの2Dエフェクト(ブラー、変形、カラー補正)は「直前の処理が終わらなければ次に進めない」シーケンシャル処理。コア数よりシングルコアのクロックがプレビュー速度を決定します。RTX 5090を積んでもCPUが旧世代なら、タイムラインのスクラブは改善されません。

Blender:レンダリングはGPU、操作はCPU

Premiere Pro / DaVinci Resolve:協調の美学


5. 用途別「正解の組み合わせ」2026年版

用途 推奨CPU 推奨GPU BTO価格帯
ゲーム特化Ryzen 7 9800X3DRTX 5070 Ti38〜42万円
映像編集Core Ultra 7 270K+RTX 508050〜60万円
3DCG / VFXCore Ultra 9 285KRTX 509085〜100万円
AI / LLMRyzen 9 9950X3DRTX 5090 (32GB)110万円〜
コスパ重視Core Ultra 5 250K+RTX 5060 Ti22〜26万円

💰 予算配分の黄金比

GPU 45〜50% / CPU 15〜20% / メモリ・ストレージ 20% / 電源・冷却 10〜15%。GPUに70%以上を割いてCPUをエントリーにすると、GPU性能の30%以上をドブに捨てる結果に。


最終結論

  • GPUだけ良くてもダメ:CPUが描画命令を発行し終えなければ、GPUは何も描けない。宝の持ち腐れ
  • CPUだけ良くてもダメ:レイトレーシングや830万ピクセルの計算は、CPUの数千倍の効率を持つGPUでなければ現実的な時間で処理不能
  • 正解:目標とする解像度で、CPU・GPU両方が100%使い切れるバランス構成を選ぶこと

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