ローカルLLMに必要なPCスペックは、主に「モデルサイズ」「量子化方式」「コンテキスト長」で決まります。小型の量子化モデルなら比較的小さなVRAMでも動作しますが、本格的に使うなら16GB前後、32B級では20GB前後、70B級では32GBを超えるVRAMが必要になるケースがあります。
詳細な必要量はモデルによって変わるため、まず以下の早見表から自分の用途・規模に合った必要スペックを確認してください。
結論:ローカルLLMに必要なPCスペック早見表
FP16(無圧縮)では10億パラメータあたり約2GBのVRAMが必要。4bit量子化で約1/4に削減可能です。
| モデル | サイズ | FP16 VRAM | 4bit VRAM | 推奨メモリ | 推奨GPU / 構成 |
|---|---|---|---|---|---|
| Phi-4 Mini | 3.8B | 8 GB | 3 GB | 16 GB | RTX 5060 |
| Llama 3.1 / Gemma 3 | 8-12B | 18 GB | 5 GB | 16-32 GB | RTX 5060-5070 |
| Qwen 2.5 / DeepSeek-R1 | 32B | 66 GB | 20 GB | 32-64 GB | RTX 5080-5090 |
| Llama 3.1 | 70B | 148 GB | ~45 GB | 64-128 GB | RTX PRO 6000 96GB / RTX 5090×2 / Mac 128GB級 |
| Mixtral 8x22B (MoE) | 141B | 281 GB | 85 GB | 128 GB+ | マルチGPU / Mac 128GB |
| Llama 3.1 | 405B | 824 GB | 230 GB | 1 TB+ | エンタープライズ |
※Mac側は旧世代M4 Maxの参考ベンチです。現行M5 Ultraの仕様・RTX 5090との選び分けはMac Studio M5 UltraとRTX 5090の比較記事で解説しています。
ローカルLLM用PCを選ぶときに見るべき7つのポイント
ローカルLLM用PCを選ぶとき、GPUの型番だけを見ても最適な構成は決まりません。
RTX 5090の方が速い。
RTX PROの方がVRAMが多い。
MacならUnified Memoryが大きい。
どれも事実ですが、重要なのは、
自分が扱いたいモデルを、どのように動かすのか
です。
CORE SPECでは、ローカルLLM用PCを見るときは次の7項目を順番に確認することをおすすめします。
1. 最初に見るのはGPU性能よりVRAM容量
ローカルLLMでは、まず「モデルがメモリへ収まるか」が大きな境界になります。
同じGPUでも、VRAM容量が足りなければモデル全体をGPUへ載せられず、CPU側のRAMへ一部を逃がす必要が出てきます。
そのため、
最新世代かどうか
より、
必要なモデルがVRAMへ収まるか
を先に確認します。
16GB、24GB、32GBでは扱える余裕が変わりますが、これらを固定的なモデルサイズの境界と考えない方が安全です。
実際に必要なVRAMは、
- モデルサイズ
- 量子化方式
- Context Length
- KV Cache
- 同時実行数
などで変わります。
上の早見表を「おおまかな入口」として使い、実際に利用するモデル仕様から逆算してください(モデルごとの詳細な必要量は無料のVRAM診断ツールでもシミュレートできます)。
2. モデルの「B」だけではなく、量子化とContext Lengthを見る
「8Bなら軽い」「70Bなら重い」という理解は入口としては正しいですが、実際の必要メモリはパラメータ数だけでは決まりません。
FP16なのか。
8bitなのか。
4bitなのか。
さらにContext Lengthをどこまで伸ばすのか。
同時に何Session動かすのか。
ここで必要メモリは変わります。
つまり、
モデル名ではなく、実際に使う形式まで決めてからPCを選ぶ
のが基本です。
大きなモデルを低bit量子化して載せるのか。
小さめのモデルを高精度で高速に回すのか。
この違いによって最適なGPUも変わります。
3. システムRAMは「VRAMに入らなかった時の余白」まで考える
ローカルLLMではGPUのVRAMだけでなく、PC本体のRAMも重要です。
GPUへモデル全体を載せられる構成でも、
- OS
- AIアプリ
- モデル読み込み
- Data Processing
- 複数アプリ併用
でRAMを使用します。
さらにCPU Offloadを使う場合は、RAM側へモデルの一部を置くことになります。
目安としては、
- 小〜中規模モデル中心なら32GBから
- ローカルLLMを本格運用するなら64GBを検討
- 大型モデルやOffloadを多用するなら128GB以上も選択肢
という考え方が分かりやすいでしょう。
ただしRAMを増やせばGPU推論が自動的に高速になるわけではありません。
RAMは主に、
扱える構成の余裕を増やすもの
と考えます。
4. SSDは速度だけでなく「モデルを何本置くか」で決める
ローカルLLMでは意外にストレージを消費します。
- モデル本体
- 異なる量子化版
- Embedding Model
- Reranker
- Dataset
- Fine-tuning用データ
- Application
これらを複数保存していくと、容量は徐々に増えていきます。
そのためローカルLLM用PCでは、
1TBでぎりぎり運用するより、2TBを基準に考える
方が余裕を持ちやすくなります。
多数のモデルやDatasetを常時保持するなら4TBも選択肢です。
一方、モデルの読み込み時間を除けば、推論中の性能はGPUやメモリ側の影響が大きいため、
ローカルLLMだから最上位Gen5 SSDが必須
というわけではありません。
容量、価格、発熱、M.2スロット数まで含めて判断してください。
5. CPUはGPUより優先度が低い。ただし不要ではない
GPUへモデルの大部分を載せて推論する構成では、一般にCPUよりGPU・VRAMへ予算を優先する方が効果的です。
ただしCPUも、
- Tokenization
- Data Processing
- CPU Offload
- 複数Applicationの同時実行
- モデルの読み込みや前後処理
などに関わります。
そのため、
最上位CPU+小容量VRAM GPU
より、
十分なCPU+必要VRAMを満たしたGPU
の方がローカルLLM用途では合理的なケースがあります。
PC全体の予算を考えるときは、この優先順位を意識してください。
6. 電源と冷却は「長時間動かす」前提で考える
Local LLMはBenchmarkを一度回して終わる用途とは限りません。
Inference Serverとして長時間動かしたり、Batch処理を続けたりすることがあります。
高性能GPUを長時間使うなら、
- PSU容量
- Case Airflow
- GPU周辺温度
- SSD温度
- Noise
まで制作環境の一部です。
瞬間的な最大性能だけではなく、
その性能を安定して出し続けられるか
を見ます。
これは業務利用になるほど重要です。
7. 最後に「増やせるPCか」を確認する
AI環境は変化が速いため、購入時点で完成形を決め切るのが難しい分野です。
だからこそ、
- RAM Slot
- 最大RAM容量
- 空きM.2 Slot
- PSU容量
- GPU Clearance
- PCIe Slot
- Cooling Capacity
を確認しておく価値があります。
最初は64GB RAM+2TB SSDで始め、必要になったら128GB RAMや追加SSDへ拡張する。GPUも将来交換する。そうした余白があるPCは、モデル世代が変わっても使い続けやすくなります。
ローカルLLM用PCの判断表
| やりたいこと | 最初に見るポイント | 次に確認するもの |
|---|---|---|
| 小〜中規模モデルを試す | 必要VRAMが収まるか | GPU比較 |
| 32B級などを本格利用 | VRAM+RAMの余裕 | 24GB / 32GB級GPU |
| PCを丸ごと新調する | GPU・RAM・SSDのバランス | BTO購入ガイド |
| 大型モデルを常用する | 32GBを超えるVRAM領域 | RTX PRO / Workstation |
重要なのは、
最も速いGPUを買うことではなく、自分のモデルが無理なく収まる構成を選ぶこと
です。
3つの次の判断
2. GPU別ベンチマーク:トークン生成速度
LLMの推論速度は、モデルサイズや量子化方式、GPU性能など複数の要因で変わりますが、メモリ帯域幅の影響も大きく受けます。
| GPU | 8B (Q4) | 70B (Q4) | 帯域幅 |
|---|---|---|---|
| RTX 5090 (32GB) | 213 tok/s | 35-42 tok/s (2枚) | 1,792 GB/s |
| RTX 5080 (16GB) | 170 tok/s | 2.4 (オフロード) | 960 GB/s |
| RTX 5070 Ti (16GB) | 110 tok/s | 1.5 (オフロード) | 896 GB/s |
| RTX 4090 (24GB) | 128 tok/s | 20-25 (2枚) | 1,008 GB/s |
| M4 Max (128GB) ※旧世代参考値 | 45-60 tok/s | 14-17 tok/s | 546 GB/s |
現行Mac Studio(M5世代)仕様
※M5 Ultraは2026年9月7日時点では発売前のため、本記事では推測によるtok/sを記載していません。M5 Ultraの仕様・選び分けの詳細はMac Studio M5 UltraとRTX 5090の比較記事をご覧ください。
注目ポイント: 32Bクラスでは、16GB VRAMに収まりにくい構成が増えます。モデルの一部をCPU RAMへオフロードすると、GPU内に収まる場合と比べて速度が大きく低下することがあります。そのため、大規模モデルを扱うほど24〜32GBクラスのVRAMが有利になります。
3. 量子化とは?モデルを軽量化して必要メモリを減らす
量子化は、モデルの重み(パラメータ)を低精度で表現し、VRAMと引き換えに品質をわずかに犠牲にする技術です。
| 手法 | VRAM削減 | 品質保持 | 速度 | 対応ツール |
|---|---|---|---|---|
| GGUF (Q4_K_M) | 75-85% | 良好 | 中 | Ollama, llama.cpp |
| GPTQ (4bit) | 70-75% | 良好 | 高 | vLLM, AutoGPTQ |
| AWQ | 70-75% | 非常に高い | 高 | vLLM, LM Studio |
| EXL2 | 60-90% | 高 | 最高 | ExLlamaV2 |
量子化方式やモデルによって品質・速度への影響は異なりますが、4bit量子化(Q4_K_M)などは実用的なバランスとしてよく用いられます。
4. 推論 vs ファインチューニング — 必要スペックが全く違う
※バッチ推論やファインチューニングなどGPUへ長時間負荷が続く用途では、GPU選定と合わせて「ローカルLLMにおける排熱・冷却設計ガイド」もご確認ください。
「動かす(推論)」と「教える(学習)」では、必要なVRAMが2-10倍違います。
| 処理内容 | 7Bモデル VRAM | 70Bモデル VRAM |
|---|---|---|
| 推論(4bit量子化) | ~5 GB | ~45 GB |
| QLoRA学習(4bit) | 12-16 GB | 60-80 GB |
| LoRA学習 | 24-32 GB | 200 GB+ |
| フルファインチューニング | 100-120 GB | 1,000 GB+ |
QLoRAは、学習時のVRAM使用量を抑える代表的な手法です。推論より多くのメモリを必要としますが、フルファインチューニングと比べて必要なVRAMを抑えやすく、単体GPUでも扱えるモデルの範囲を広げられます。
5. おすすめツール4選
🥇 Ollama — 最も簡単
コマンド一つでモデル起動。NVIDIA/AMD/Apple Silicon対応。ollama run llama3.1 だけで動く。
🥈 LM Studio — 最高のGUI
Hugging Faceのモデルを検索→ダウンロード→チャットまでGUIで完結。初心者に最適。
🥉 llama.cpp — 最も柔軟
GGUFフォーマットの総本山。CPU推論も高速。GPUとRAMの配分を細かく制御可能。
vLLM — プロダクション向け
継続的バッチングで複数人同時アクセスに強い。APIサーバー構築のデファクト(Linux推奨)。
6. Mac vs Windows — どちらがLLMに強い?
2026年のローカルLLMは「速度のNVIDIA vs 容量のApple」という構図です。
| 比較項目 | Windows + RTX 5090 | Mac M4 Max (128GB) ※旧世代参考 |
|---|---|---|
| 8Bモデル速度 | 213 tok/s | 45-60 tok/s |
| 70Bモデル | VRAM不足(1枚では不可) | 14-17 tok/s |
| ファインチューニング | CUDA + QLoRA | MLXなど対応拡大中 |
| 静音性 | 高負荷時ファン音あり | 静音性に優れる |
| 電力 | 数百W(構成による) | 省電力 |
🎯 選択の指針
Mac → 70B超の巨大モデルを省電力・静音で1台にまとめたい人
Windows → 8-32Bモデルを超高速で動かしたい人、ファインチューニングしたい人、APIサーバーを立てたい人
7. 運用コスト:API vs ローカル
ローカル環境とAPIのどちらが低コストかは、利用頻度、使用するモデル、API料金、電気料金、PCの購入価格によって変わります。利用頻度が低い場合はクラウドが合理的なこともあります。一方、継続的に大量の推論を行う場合は、ローカル環境の方がコストを予測しやすくなる場合があります。
※詳しい比較は上の「ローカルLLMはChatGPT・Claudeの代わりになる?」の記事をご参照ください。
おすすめ構成3パターン
小型モデル中心
- 8B前後のモデル
- VRAM 12〜16GBクラス
- RAM 32GB〜
32Bクラスを視野に入れる
- VRAM 24〜32GBクラス
- RAM 64GB〜
70Bクラスを本格的に扱う
- RTX PRO 6000 96GB
- 複数GPU構成
- 大容量Unified Memory
- RAM 128GB〜
結論:ローカルLLM時代のPC選び
8B前後の小型モデルを試す
12〜16GBクラスのVRAMでも始めやすいです。
32Bクラスまで視野に入れる
VRAM 24〜32GBクラスが扱いやすいです。
70BクラスをGPU上へ多く載せたい
RTX 5090など一般向けGPU1枚では不足しやすく、RTX PRO 6000 96GB、複数GPU、大容量Unified Memoryなどが検討対象になります。
ファインチューニングを行う
推論時よりもさらに大きなVRAM・RAM容量を見込んでおく必要があります。
