メモリ・SSD・保存方法・拡張性・寿命から、数年間使いやすいPC構成を順番に考えるシリーズです。第1回は、クリエイターや生成AI利用で迷いやすい32GBと64GBのメモリ容量の判断基準を整理します。
結論:32GBと64GB、どっちを選ぶ?
128GBは、64GBを使い切るワークステーション用途で検討
🟢 32GB|一般・ゲーム
- ゲーム単体
- Office・ブラウザ
- Photoshop・Illustrator
- フルHDの軽い動画編集
- 軽い画像生成
🔵 64GB|クリエイター標準
- 4K動画編集・After Effects
- Blender・3DCG
- ComfyUI・動画生成AI
- TouchDesigner
- VTuber・ゲーム配信
🟣 128GB|業務・ワークステーション
- 大規模ローカルLLM
- 8K・RAW・VFX
- Houdiniシミュレーション
- 複数VM・開発環境
- 業務用ワークステーション
ゲームや一般作業なら32GB、生成AI・動画・3DCG・配信なら64GB、大規模LLMや業務用ワークステーションなら128GBが目安です。
1. PCメモリ32GB・64GB・128GBの違い
RAM(メモリ)は、OS、CPU、アプリケーションが作業中のデータを一時的に置いておく領域(作業机)です。メモリ容量は、足りている状態では増やしても必ずしも処理速度が上がるわけではありません。
一方で、必要量を超えた処理を行うと、システムは入りきらないデータを低速なストレージへ退避(スワップ)させるため、プレビューの遅延、アプリの停止、処理不能などが発生します。128GBは単純な「高速化パーツ」ではなく、大規模な処理を止めずに実行するための容量として位置づけられます。
2. メモリ32GBで足りる人
一般作業、Office、ブラウザ利用、そして多くのゲーム単体プレイであれば、32GBで十分に快適な環境を構築できます。PhotoshopやIllustratorを利用した2Dイラスト制作、軽い画像生成、フルHD中心の軽い動画編集でも、32GBで対応可能です。
ただし、ゲーム用途でも例外はあります。重量級MODを多数導入する環境や大規模な都市開発シミュレーションなどでは、32GBで不足しやすくなるケースがあります。
3. メモリ64GBが必要な人
クリエイター用途の標準的なラインです。以下の用途では64GBを選ぶことで、作業をスムーズに進められます。
- 4K動画編集・After Effects
- 3DCG・VFX
- ComfyUIや高解像度の画像生成
- 動画生成AI
- TouchDesigner
- VTuber・ゲーム配信
- 複数アプリの同時使用
- 長期間増設せず使いたい人
4. メモリ128GBを検討すべき人
一般的な用途を超え、以下のような大規模な処理を行う人向けのワークステーション領域です。
大規模ローカルLLM
モデルサイズがGPUのVRAMに収まらない場合、CPUオフロードによってメインメモリを使用します。ローカルLLMに必要なPCスペックは、モデルのパラメーター数、量子化方式、GPUのVRAM容量、長いコンテキスト、複数モデルの同時起動、ベクトルDBなどによって大きく変動します。「ローカルLLMなら必ず128GB」ではなく、オフロード量や環境に応じて検討します。
大規模映像制作・VFX
8K映像、RAWデータの編集、長尺動画、多数のレイヤーを重ねたコンポジションなどではキャッシュ量が膨大になります。Premiere Pro、After Effects、Photoshopなどを併用する環境でも威力を発揮します。
3DCG・シミュレーション
Houdiniでの複雑なパーティクルや流体シミュレーション、高解像度テクスチャを大量に読み込む大規模シーン、Unreal Engineとの併用などにおいて、メモリ不足によるクラッシュを防ぎます。
仮想マシン・開発
複数のVM(仮想マシン)、Dockerコンテナ、ローカルAIサーバーの実行など、開発環境と制作ソフトを同時に稼働させる場合に有効です。
128GBにしても効果が薄いケース
ゲーム単体、Office、一般的な画像編集、軽い動画編集など、メモリ使用量が64GB未満に収まっている処理では、128GBにしても必ずしも速くなりません。64GBで足りている処理は、128GBにしても大幅な性能向上は期待できないことに注意が必要です。
5. 用途別メモリ容量早見表
| 用途 | 32GB | 64GB | 128GB | 推奨容量 |
|---|---|---|---|---|
| 一般作業・Office | ◎ 推奨 | 過剰 | 過剰 | 16〜32GB |
| ゲーム | ◎ 推奨 | 〇 使用可能 | 過剰 | 32GB |
| 重量級MOD | 〇 使用可能 | ◎ 推奨 | 過剰 | 64GB |
| ゲーム配信 | 〇 使用可能 | ◎ 推奨 | 過剰 | 32〜64GB |
| Photoshop・Illustrator | ◎ 推奨 | 〇 使用可能 | 過剰 | 32GB |
| 4K動画編集 | △ 不足しやすい | ◎ 推奨 | 〇 使用可能 | 64GB |
| 8K・RAW映像 | × 非推奨 | 〇 使用可能 | ◎ 推奨 | 128GB |
| After Effects | △ 不足しやすい | ◎ 推奨 | 〇 使用可能 | 64〜128GB |
| Blender・3DCG | 〇 使用可能 | ◎ 推奨 | 〇 使用可能 | 64GB |
| Houdini・シミュレーション | △ 不足しやすい | 〇 使用可能 | ◎ 推奨 | 128GB |
| Stable Diffusion・Flux | 〇 使用可能 | ◎ 推奨 | 過剰 | 32〜64GB |
| ComfyUI | △ 不足しやすい | ◎ 推奨 | 〇 使用可能 | 64GB |
| 動画生成AI | △ 不足しやすい | ◎ 推奨 | 〇 使用可能 | 64GB〜 |
| TouchDesigner・VJ | 〇 使用可能 | ◎ 推奨 | 過剰 | 64GB |
| VTuber配信 | 〇 使用可能 | ◎ 推奨 | 過剰 | 64GB |
| ローカルLLM | △ 小型モデル向け | 〇 使用可能 | ◎ 推奨 | 64〜128GB |
| 仮想マシン | △ 不足しやすい | 〇 使用可能 | ◎ 推奨 | 64〜128GB |
Premiere ProだけでなくAfter Effects、3DCG、生成AIまで同時に使う場合は、必要なメモリ容量も大きく変わります。映像クリエイター向けPCのメモリ・GPU構成も確認してください。
6. RAMとVRAMの違い
メモリ(RAM)とVRAMは役割が異なります。RAMはOSやアプリ全体が使用するシステムメモリであり、VRAMはGPUがモデルや画像などを処理する専用メモリです。
RAMを128GBにしてもVRAM不足そのものは直接解消しません。VRAM不足で起きることとして、メインメモリ(RAM)へのフォールバックがありますが、速度は大きく低下します。CPUオフロードではRAMを使用する場合がありますが、GPUの純粋な処理速度とRAM容量は別の問題です。用途に合わせて、RAMとVRAMの両方を適切に確認する必要があります。
7. メモリ128GBを選ぶ前に確認すること
大容量メモリを搭載する場合、いくつかのハードウェア的な制約を確認する必要があります。
64GB×2枚と32GB×4枚
一般的に、64GB×2枚構成はスロットを空けやすく、将来の増設余地を残せるメリットがあります。一方、32GB×4枚構成はスロットをすべて使用し、4枚挿しではメモリ速度が下がる場合や、XMP/EXPOといったオーバークロック設定が安定しない場合があります。
また、CPUのメモリコントローラーへの負荷が増え、マザーボードやBIOSの組み合わせによって相性が出ることがあります。64GB×2構成はスロットを空けやすく、4枚構成より安定させやすい場合があります。ただし、CPU、マザーボード、メモリ、BIOSによって異なるため、安定動作にはBTOメーカーの検証済み構成を選ぶ利点が大きくなります。
最大搭載容量の確認
後から増設を考える場合、以下を確認してください。
- マザーボードの最大搭載容量とメモリスロット数
- 1スロット当たりの対応容量
- CPUの対応メモリ仕様
- DDR4かDDR5か、およびBIOSの対応状況
- BTOメーカーの選択可能容量
- ノートPCの増設可否(オンボードメモリか)
詳しくはマザーボードの拡張性の記事もご覧ください。
8. 32GB・64GB・128GBの価格差をどう判断するか
メモリ容量を決める際は、以下の優先順位で判断することをおすすめします。
- 必要容量を満たす
- GPUを極端に下げない
- 増設可能性を確認
- 業務停止リスクを考える
- 数年間使う予定なら将来性も考慮する
ゲーム用途でRTX 5080をRTX 5070へ落としてまでメモリを128GBにする必要はありません。しかし、大規模LLMで64GBでは処理不能になるようなケースなら、128GBを優先する判断になります。後から増設しにくいノートPCでは購入時の容量が特に重要であり、業務用PCでは「メモリの価格差」よりも「システム停止・遅延による時間の損失」の方が高くつく場合があります。
9. 容量別のおすすめPC構成
まとめとして、容量別の推奨ターゲットを整理します。
32GB構成
ゲーム、一般作業、2D制作、軽量な生成AIが中心で、GPUに優先して予算を配分したい方向けです。
64GB構成
生成AI、4K動画編集、After Effects、3DCG、TouchDesigner、配信などを本格的に行うクリエイター向けの標準的な構成です。
128GB構成
大規模LLM、8K・RAW映像、VFX、Houdini、複数VMを利用するワークステーション向けです。RTX 5090などの上位GPUと組み合わせることが多いですが、用途によってはRTX 5080+128GBなどの構成も成立します。
10. 結論
ゲームや一般作業なら32GB、生成AI・動画編集・3DCG・配信なら64GB、大規模ローカルLLMやVFX、シミュレーション、複数VMなどのワークステーション用途では128GBが目安です。ただし、メモリ容量は多ければ常に速くなるわけではなく、実際の使用量と用途に合わせて選ぶことが重要です。
よくある質問
PCメモリは32GBと64GBで体感差がありますか? +
ゲーム用PCに64GBのメモリは必要ですか? +
生成AI用PCは32GBで足りますか? +
メモリは後から32GBから64GBへ増設できますか? +
メモリ64GBとVRAM 16GBは同じものですか? +
メモリ128GBはどんな人に必要ですか? +
メモリ64GBと128GBで処理速度は変わりますか? +
128GBは64GB×2と32GB×4のどちらがよいですか? +
用途別のSSD容量目安とパーティション・スロット設計
メモリ設計|32GBと64GB、クリエイターに必要な容量は?
容量設計|1TB・2TB・4TBのどれが必要か?
保存設計|内蔵SSD・外付け・NAS・クラウドの使い分け
拡張設計|将来性を左右するマザーボード・パーツの見方
長期運用|寿命・買い替え判断と延命のポイント