RTX 5090のTGPは575W。数字だけを見ると、「毎月の電気代がかなり高くなるのでは?」と不安になるかもしれません。
しかし、GPUのTGPと毎月の電気代は同じものではありません。
実際の電気代を決めるのは、CPUやGPU、メモリ、ストレージ、冷却などを含めたPC全体の消費電力と、その状態で何時間使うかです。
1日数時間だけ高負荷処理をする人と、生成AIやレンダリングを24時間動かす人では、同じRTX 5090搭載PCでも年間の電気代は大きく変わります。
この記事では、RTX 5090・5080・5070を例に、電力単価と使用時間を設定して月額・年間コストを試算します。
また、「消費電力が低いGPUほど電気代も得なのか」という点について、処理時間まで含めて考えます。
この記事の結論
- PCの電気代は、GPU名ではなく「PC全体の実消費電力 × 使用時間 × 電力単価」で決まります。
- 本記事のモデルケース「1日6時間、高負荷4時間+軽作業2時間、35円/kWh」では、RTX 5090システムを月約2,560円と試算します。
- この金額はRTX 5090搭載PCすべてに当てはまる固定値ではありません。
- 1日数時間の利用ならGPU間の電気代差は限定的な場合があります。
- 一方、AI学習、レンダリング、サーバー用途などで長時間・常時稼働させる場合は、消費電力差が年間コストへ大きく反映されます。
- 制作用途では「何W消費するか」だけでなく、「その処理が何時間で終わるか」も確認する必要があります。
重要なのは「RTX 5090は月いくら」と覚えることではなく、自分の使い方で計算することです。
GPUを選ぶときは、消費電力だけでなく、必要な性能やVRAM容量も合わせて考える必要があります。
電気代を確認したうえで、自分に必要なGPUクラスを整理したい方はGPUガイドへ進んでください。
まず、計算の前提を整理する
電気代の計算式はシンプルだ。
電気代の計算式
消費電力(W)÷ 1000 × 使用時間(h)× 電力単価(円/kWh)
本記事では比較を分かりやすくするため、電力単価を35円/kWhに固定して計算します。
これは全国一律の電気料金ではありません。
実際の料金は、地域、契約プラン、使用量、燃料費調整額、再生可能エネルギー発電促進賦課金などによって変わります。
そのため、ここで示す金額は「PC構成ごとの絶対的な電気代」ではなく、同じ条件でGPU構成を比較するためのモデルケースとして見てください。
電力単価が変われば、月額も変わる
例えば、本記事のRTX 5090モデルケースでは月間消費電力量を約73.2kWhとして計算しています。
同じ使い方でも、電力単価が違えば月額は次のように変わります。
| 電力単価 | 月額の目安 |
|---|---|
| 30円/kWh | 約2,200円 |
| 35円/kWh | 約2,560円 |
| 40円/kWh | 約2,930円 |
自分の電気料金をより正確に知りたい場合は、契約している電力会社の請求書や料金プランを確認し、実際の1kWhあたりの単価へ置き換えて計算してください。
GPUの公称TGPと、システム全体の消費電力モデル
RTX 5090・5080・5070のTGPは、GPUメーカーが公開している公称値です。
一方、PC全体の消費電力はGPUだけでは決まりません。
CPU、マザーボード、メモリ、SSD、ファン、ポンプ、USB機器、電源変換効率などによって変わります。
そのため、以下の「システム全体」の数値は実測値ではなく、本記事のシミュレーションに使用するモデル値です。
| 構成 | GPU消費電力(TGP) | システム全体 (計算用モデル値) |
アイドル時 (モデル値) |
|---|---|---|---|
| RTX 5090搭載ハイエンドシステム | 575W | 750〜850W | 90〜120W |
| RTX 5080搭載ハイエンドシステム | 360W | 500〜600W | 80〜110W |
| RTX 5070搭載システム | 250W | 380〜450W | 70〜100W |
※GPUのTGPは公称値。システム全体の消費電力は本記事の計算用モデル値です。
実際の消費電力は、アプリケーションや処理内容によって常に変動します。
例えばゲーム、動画レンダリング、ComfyUIでの連続生成、CPUとGPUを同時に使う処理では負荷のかかり方が異なります。
本記事ではGPU間を同じ条件で比較するため、高負荷作業中の平均消費電力を「想定フル負荷時の70%」として計算します。
70%は実測平均ではなく、シミュレーション上の仮定です。
月額電気代シミュレーション
ここからは、特定の使い方をモデルケースとして月額を計算します。
この結果は「RTX 5090なら必ずこの金額になる」という意味ではありません。
シナリオ:1日6時間使用(AI生成・動画編集など負荷がかかる作業4時間 + ブラウジング・軽作業2時間)。残りの時間はPCをシャットダウン。月30日。
※ 高負荷時の消費電力は計算用モデル値、電力単価は35円/kWhで固定しています。
| 構成 | 高負荷4h (計算上70%と仮定) |
軽作業2h (アイドル〜低負荷) |
月額合計 |
|---|---|---|---|
| RTX 5090 システム | 560W × 4h = 2.24kWh | 100W × 2h = 0.2kWh | 約2,560円 |
| RTX 5080 システム | 385W × 4h = 1.54kWh | 90W × 2h = 0.18kWh | 約1,810円 |
| RTX 5070 システム | 290W × 4h = 1.16kWh | 80W × 2h = 0.16kWh | 約1,390円 |
このモデルケースでは、RTX 5090システムが月約2,560円、RTX 5080システムが約1,810円、RTX 5070システムが約1,390円という結果になります。
RTX 5090とRTX 5080の差は、この条件では月約750円、年間約9,000円です。
ただし、この差額は「1日6時間・高負荷4時間」という今回の条件での値です。
高負荷時間が短ければ差は小さくなり、逆に長時間稼働させるほど差は大きくなります。
使用時間が増えると、電気代の差も大きくなる
GPU間の電気代差を考えるとき、最も重要なのは1日の高負荷時間です。
1日数時間だけ制作する人と、AI学習やレンダリングでPCを長時間動かす人では、年間コストの意味が変わります。
例えば、RTX 5090とRTX 5080にはGPU単体の公称TGPにも差があります。
高負荷状態が長く続くほど、その消費電力差は電気料金へ積み上がります。
そのため、
- 数時間の制作が中心
- 仕事中だけ使用する
- 夜間も学習やレンダリングを続ける
- 24時間サービスや処理を動かす
では、同じGPUでも電気代の重要度が変わります。
長時間・常時稼働を前提にする人ほど、購入価格だけでなく年間の電力コストも確認してください。
消費電力が高いGPUほど「1回の処理コスト」が高いとは限らない
PCの消費電力を考えるとき、「何W使うか」だけではなく、「その状態が何時間続くか」も重要です。
電気料金で支払うのは、瞬間的な消費電力ではなく、時間を掛け合わせた消費電力量です。
例えば、
500Wで1時間処理する場合
500W ÷ 1000 × 1時間 = 0.5kWh
です。
一方、
300Wで2時間処理する場合
300W ÷ 1000 × 2時間 = 0.6kWh
になります。
この例では、消費電力が高い500Wのシステムの方が、処理を短時間で終えることで1ジョブあたりの消費電力量は小さくなります。
もちろん、実際にどちらが効率的かはアプリケーションやGPUによって異なります。
重要なのは、「高性能GPUはW数が高いから必ず電気代も不利」と決めつけず、同じ仕事を完了するまでの時間まで含めて考えることです。
「1000W電源」は月1000W使うという意味ではない
よくある誤解を解いておきたい。「1000W電源を搭載しているから電気代が高い」と考える人がいるが、これは間違いだ。
電源ユニットの容量は「最大供給能力」であり、1000W電源を搭載しているから常に1000Wを消費するわけではありません。
実際のアイドル時消費電力は、CPU・GPU・マザーボード・周辺機器・省電力設定などによって異なります。
1000Wという数字は「最大1000Wまで供給できる容量」を示すものであり、実際の消費電力を示すものではありません。
電源ユニットの変換効率は負荷率によって変わります。
ただし、「大容量電源を選べば電気代が安くなる」という意味ではありません。
GPUやCPUのピーク電力に必要な容量と適切な余裕を確保したうえで、80 PLUSなどの効率指標や製品ごとの変換効率を確認してください。
電気代を理由にGPUを下げるべきか?
今回のモデルケースでは、RTX 5090システムとRTX 5080システムの電気代差は年間約9,000円です。
この条件だけを見れば、PC本体価格に対して電気代差は比較的小さいと感じる人もいるでしょう。
一方、RTX 5090とRTX 5080では、消費電力だけでなく性能やVRAM容量にも違いがあります。
そのため、GPUを選ぶときは、
- 購入価格
- 必要な処理性能
- 必要なVRAM容量
- 1日の高負荷時間
- PCを何年間使うか
- 年間の電気代
を合わせて判断する必要があります。
短時間利用なら、電気代だけを理由にGPUを1段階下げる必要性は高くない場合があります。
しかし、AI学習やレンダリングを毎日長時間行う場合は、電力コストも無視できない判断材料になります。
「電気代は気にしなくてよい」「性能を落としてはいけない」のどちらかに固定せず、自分の使い方から総コストを考えてください。
RTX 5090とRTX 5080ではVRAM容量にも差があります。
ローカル生成AIや大規模モデルなどVRAMを多く使う用途では、電気代だけでなく「自分の処理に必要なVRAMを満たすか」を先に確認してください。
必要なVRAMを満たしたGPU同士で、価格と電力コストを比較する方が合理的です。
高性能GPUによって同じ処理を短時間で終えられる場合、単純なW数の差だけでは1ジョブあたりの電力コストを判断できません。
今回のモデルケースでの年間コスト
| 構成 | 月額 | 年額 | 5090との年間差 |
|---|---|---|---|
| RTX 5090 | 約2,560円 | 約30,700円 | — |
| RTX 5080 | 約1,810円 | 約21,700円 | ▲ 約9,000円 |
| RTX 5070 | 約1,390円 | 約16,700円 | ▲ 約14,000円 |
※ 1日6時間使用(高負荷4時間+軽作業2時間)、高負荷時は計算上70%負荷、電力単価35円/kWhとして算出したモデルケースです。
※ 実際の消費電力はCPU、GPU、周辺機器、アプリケーション、電源効率などによって変わります。
※ 24時間稼働や長時間のAI学習・レンダリングでは、この金額より大きくなる可能性があります。
まとめ:電気代は「GPU名」より「使い方」で決まる
ハイエンドPCの電気代は、「RTX 5090だから高い」「RTX 5070だから安い」とGPU名だけで決めることはできません。
電気代を決めるのは、PC全体の実消費電力と、その状態で何時間使うかです。
本記事のモデルケースでは、1日6時間の利用でRTX 5090システムを月約2,560円と試算しました。
しかし、高負荷処理が1日1時間なのか、8時間なのか、24時間なのかで年間コストは大きく変わります。
また制作用途では、消費電力だけでなく、そのGPUが同じ仕事をどのくらいの時間で終えられるかも重要です。
GPUを選ぶときは、
- 性能
- VRAM
- 購入価格
- 消費電力
- 使用時間
を分けて考えてください。
電気代を過度に恐れる必要もありません。
逆に、長時間運用する人が無視する必要もありません。
自分の使い方を数字へ置き換えて判断することが、ハイエンドPCの運用コストを考える最も確実な方法です。