COLUMN — 賢い投資術

PC40万円未満は一括経費にできる?
2026年改正と個人事業主の条件・注意点

公開: 2026.05.09 | 更新: 2026.08.11広告・PR

20年間変わらなかった「30万円の壁」がついに崩れた。
フリーランスが知っておきたいPC経費化の新ルール。

節税を象徴するホログラムとハイエンドPC
※画像はイメージです。実際の製品・構成とは異なる場合があります。

事業に使用するPCの購入費用は、取得価額や利用状況に応じて、必要経費または減価償却費として処理できる場合があります。
個人利用と事業利用を兼ねるPCでは、事業に必要な部分を明確に区分して考える必要があります。

さらに2026年度税制改正では、一定の青色申告者が利用できる「少額減価償却資産の特例」の取得価額基準が、30万円未満から40万円未満へ引き上げられました。

この記事では、「40万円未満なら必ず全額経費になる」という単純な説明ではなく、制度の対象条件と注意点を整理します。

20年ぶりの大改正:「30万円の壁」が「40万円」に

青色申告をしている個人事業主が使える「少額減価償却資産の特例」。これは、一定の金額以下のPCなどの備品を、購入した年に全額を経費として計上できる制度です。

2026年度(令和8年度)の税制改正により、この上限が「30万円未満」から「40万円未満」へ引き上げられました。2003年の制度創設以来、実に20年以上変わらなかった基準がついに見直されたのです。

項目 旧基準(〜2026年3月) 新基準(2026年4月〜)
一括経費の上限 30万円未満 40万円未満
年間の合計限度額 300万円 300万円(据え置き)
適用期限 2026年3月31日 2029年3月31日
従業員数要件 500人以下 400人以下

これが意味すること

今までは35万円のPCを買うと「4年かけて分割で経費化(減価償却)」する必要がありました。しかし特例の対象となる青色申告者が、要件を満たす事業用資産として取得し、業務の用に供した場合、取得価額39万円のPCも特例の対象になり得ます。

※経費計上と資金繰りの注意点

なお、「経費にできる」ということは、購入代金そのものが戻ってくるという意味ではありません。必要経費として計上することで課税所得の計算に反映されます。また、通常の減価償却と少額減価償却資産の特例では、費用計上するタイミングが異なるため、実際の効果は所得状況や税率、資金繰りによって変わります。

40万円以上のPCを買った場合はどうなる?

40万円以上のPCなど、特例の取得価額基準に収まらない資産でも、通常の減価償却によって事業利用分を費用配分します。

基本:PCは原則4年間で減価償却する

パソコンの法定耐用年数は4年です。個人事業主では通常「定額法」が用いられ、耐用年数に応じて複数年にわたり経費化されます。基本的には、経費になる時期が前倒しになるか分割されるかの違いです。ただし、所得や税率、資金繰りによって、実際の有利不利は変わります。

高額なPCを経費としてどう扱うかだけでなく、そもそも100万円クラスの計算資源へ投資する意味があるかも、購入前に切り分けて考える必要があります。

100万円超のハイエンドPCへ投資する意味を見る →

分割払いを利用する場合の考え方

分割払いを利用すると購入時の現金支出を分散できる場合があります。一方、税務上の費用計上は毎月の返済額ではなく、取得価額や制度上の要件に基づいて考えます。資金繰りと税務処理は分けて判断しましょう。

知っておくべき3つの落とし穴

① 本体とモニターの「セット判定」に注意

PC本体、ディスプレイ、周辺機器をどの単位で取得価額判定するかは、通常の取引単位や利用実態などによって異なります。40万円前後になる場合は個別確認が安全です。

  • 旧基準(30万円未満): 合算35万円と判定された場合 → 一括経費化できない
  • 新基準(40万円未満): 合算35万円と判定された場合 → 一括経費化が可能に

この「10万円の基準引き上げ」が、実務上は非常に大きな差を生むケースがあります。

② BTOパーツは「1台のPC」として判定される場合がある

完成品PCとして一体で取得した構成について、請求書を形式的に分けただけで各パーツを別資産として扱えるとは限りません。取得価額の判定単位は、通常の取引単位や機能・利用実態を踏まえて判断する必要があります。

③ 消費税の経理方式で「ボーダーライン」が変わる

40万円の判定は、あなたが採用している消費税の会計処理によって結果が変わります。本体価格38万円(税込41.8万円)のPCを例に見てみましょう。

  • 課税事業者(税抜経理): 税抜38万円で判定 → 40万円未満 → 一括経費化OK
  • 免税事業者(税込経理): 税込41.8万円で判定 → 40万円超 → 一括経費化NG(4年償却)

まったく同じPCを買っても、免税事業者(税込経理)は常に税込価格で判定されるため、結果が逆転するケースがあります。ボーダーライン付近の価格帯では特に注意してください。

⚠ 確定申告時の注意

個人事業主がこの特例を適用する場合は、青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄などに「措法28の2」と記載し、明細を保存・添付する必要があります。特例の適用には所定の申告・記載が必要です。
※法人の場合は「措法67の5」となります。

ソフトウェアの経費処理

Adobe Creative CloudMicrosoft 365などの月額・年額のSaaS型サービスは、通常、利用料として経費処理できます。ただし、1年を超える契約期間の前払い、独自カスタマイズ費用、買い切り型ソフトウェアなどは、前払費用や資産計上が必要になる場合があります。

結論:必要なPCを選び、税務処理と資金繰りを分けて考える

PCを経費にできること自体を、購入理由にする必要はありません。

まず仕事に必要な性能と予算を決め、そのうえで一括経費の特例を利用できるのか、通常の減価償却になるのかを確認することが重要です。

40万円未満の特例は設備投資時の選択肢を広げますが、実際の税務上の効果は所得状況や事業利用割合、経理方式などによって異なります。

「節税できるから買う」ではなく、「必要な設備をどう適切に処理するか」という順番で考えましょう。

※本記事は2026年8月11日時点で確認できる公的情報に基づく一般的な情報提供です。個別の税務処理は、事業形態、取得方法、事業利用割合、消費税の経理方式などによって異なる場合があります。具体的な適用判断については、税理士または税務署等の専門窓口にご確認ください。

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