150万円の高性能PCを買う。金額だけを見れば、非常に大きな支出です。
では、その150万円をPCに使わず、2020年からS&P500や全世界株式(オルカン)へ投資していたら、2026年9月にはいくらになっていたのでしょうか。
この記事では、2020年1月6日に150万円を一括投資し、2026年9月25日まで保有したと仮定して、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)とeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の実績からシミュレーションします。
ただし、この記事の主眼は証券口座を比較することや、「PCを買わずに投資した方が得だった」と煽ることではありません。現金は流動性、計算資源は仕事・制作に活用できる設備、金融資産は価格変動を受けながら長期資産形成を目指すものという役割の違いを整理し、PC・現金・金融資産を資本配分として考えるための判断軸を提示します。
30秒でわかる結論
2020年1月6日に150万円を一括投資し、2026年9月25日まで保有していたと仮定すると、概算結果は次のようになります。
| 投資先 | 2020/01/06 | 2026/09/25 | 150万円の評価額 | 増加額 / 騰落率 |
|---|---|---|---|---|
| eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 11,873円 | 45,049円 | 約5,691,359円(約569万円) | +約419万円 (+279.4%、約3.79倍) |
| eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン) | 11,569円 | 38,325円 | 約4,969,098円(約497万円) | +約347万円 (+231.3%、約3.31倍) |
| 現金(手元保持) | 150万円 | 150万円 | 150万円 | ±0円 (0.0%) |
【重要注記】シミュレーションに関する前提条件
- 本シミュレーションは税金・口座区分を考慮しない単純比較です。課税口座で売却した場合の譲渡益等にかかる税金や、その他の費用は考慮していません。
- 2020年当時のNISA制度は現在とは異なり、150万円をそのまま当時のNISAへ一括投入したケースを再現するものではありません。(当時の一般NISAは年120万円・非課税期間5年、つみたてNISAは年40万円・非課税期間20年でした)
- 現金150万円については、名目額の比較であり、インフレによる購買力低下を考慮していません。
- 過去の運用実績は将来の成果を保証するものではありません。金融資産には価格変動リスクがあり、元本保証はありません。
150万円の3つの置き場所
現金(150万円)
手元資金としての流動性。生活防衛資金、税金、突発的な支出、事業の運転資金に対応し、不測の事態への安全マージンを確保する。
計算資源(150万円)
仕事・制作・事業で利用。作業時間の短縮、試行回数の増加、AIや3DCG等の実務処理を支え、自身のキャッシュフローを広げる基盤になり得る。
金融資産(150万円)
価格変動を受けながら長期運用し、時間をかけた資産形成を目指す(途中の値下がりリスクを伴う)。
※どれか一つが優れているわけではありません。3つの置き場所それぞれの役割を理解し、自分の状況に合わせて配分することが重要です。
1|150万円は、どう計算したのか
計算方法はシンプルです。
150万円 × 2026年9月25日の基準価額 ÷ 2020年1月6日の基準価額
S&P500の計算結果
1,500,000円 × 45,049 ÷ 11,873 = 約5,691,359円(約569万円)
元本150万円に対して約4,191,359円の増加(約3.79倍、約+279.4%)です。
オール・カントリー(全世界株式)の計算結果
1,500,000円 × 38,325 ÷ 11,569 = 約4,969,098円(約497万円)
元本150万円に対して約3,469,098円の増加(約3.31倍、約+231.3%)です。
この期間だけを見ると、どちらも大きなリターンでした。しかし、この数字は2026年から振り返った「結果」に過ぎません。2020年時点の投資家には、その後に世界経済や市場がどう推移するかは誰にも予測できませんでした。
※基準価額は三菱UFJアセットマネジメント公式データおよび主要金融機関(楽天証券等)の公表基準価額履歴を参照しています。
2|本当に難しいのは「買うこと」ではなく「持ち続けること」
2020年1月に投資した直後、世界は新型コロナウイルスの感染拡大による急落局面(コロナショック)に入りました。
S&P500の基準価額は2020年1月6日の11,873円から、2020年3月24日には8,432円まで下落しました。150万円換算では約1,065,274円となり、一時的に約107万円まで下落(約-29%)した計算になります。
オルカンの基準価額も2020年1月6日の11,569円から、2020年3月24日には8,102円(設定来安値)まで下落しました。150万円換算では約1,050,480円となり、一時的に約105万円まで下落(約-30%)しました。
2020→2026年の資産推移経路
S&P500は「150万円 → 約107万円 → 約569万円」、オルカンは「150万円 → 約105万円 → 約497万円」という経路をたどりました。最初から増えることが保証されていたわけではなく、一時的に約105万〜107万円まで下落した局面を抱えながら保有を続けた結果です。
3|PC・現金・金融資産は、それぞれ役割が違う
ここで、「150万円のPCを買うより、S&P500へ投資した方が得だった」と短絡的に結論づけることはできません。PCと金融資産では役割がまったく異なるからです。
現金の価値は「すぐに使えること」。生活費、税金、急な支出、事業資金などに対応できます。
株式や投資信託は、価格変動を受けながら長期的な資産形成を目指すものです。そのため、自分が資金を必要とするタイミングで価格が大きく下落している可能性もあります。
PCやGPUは、金融資産のように市場価格の上昇を期待して持つものではありません。仕事、制作、AI活用、開発、レンダリングなどに使い、自分自身の生産能力を高めるための資産です。
だから比較すべきなのは、「PCか株か」ではなく、「現金・計算資源・金融資産へ、自分の資本をどう配分するか」です。
4|AI時代のPCは「消費」だけではなく「生産資産」にできる
高性能PCを買っても、机の上に置いてあるだけでは収益を生みません。重要なのは、その計算資源を何に使うかです。
生成AI、動画編集、3DCG、AIアプリ開発、ローカルLLM、VFX、プログラミング──AIやデジタル制作が進化する現代において、計算資源は単なるスペックの高さではなく「何を実行できるか」を支える基盤になります。
もちろん、「高性能PCを買えば必ず稼げる」という安易な話ではありません。PCは道具であり、計算資源を仕事へ活用し、キャッシュフローを広げられる場合があるという位置づけです。
そのためCORE SPECでは、PCを単なる支出ではなく、
- どれだけの時間を短縮できるか(作業時間の圧縮)
- どれだけ試行回数を増やせるか(アウトプットの品質向上)
- どんな仕事を新しく受けられるか(受注単価・制作領域の拡大)
という視点から考えます。自身の仕事で何カ月で回収できるかの判断基準は「PC投資回収シミュレーター」や「計算資源を事業資産として持つ意味」でも解説しています。また、より広いAI投資の全体像については「AI PCの投資判断」も参考になります。
5|0%分割は「投資するための借金」ではない
高額PCの購入では、BTOメーカー各社で一定回数まで分割手数料が無料になるキャンペーンが提供されることがあります。0%分割なら、一括購入と比べて購入直後の手元現金を厚く保つことができます。
しかし、「PCを0%分割で買い、残した手元資金を株式へ全額投資すれば合理的」と考えるのは推奨しません。
金融資産には価格変動があります。分割払いの毎月の支払義務は確定して継続する一方で、投資した資金が市場の急変で一時的に大きく下落することは十分にあり得ます。
CORE SPECの「BTOパソコンの分割払い・0%金利ローン」でも整理している通り、0%分割は「予算を増やすための仕組み」ではなく、「必要なPCの支払い時期を調整する選択肢」です。ローンの支払義務を抱えながら投資を行うような、実質的なレバレッジをかけるべきではありません。
健全な判断の順序:
① まず仕事や制作に必要なPCスペックと予算を決める。
② そのPCを購入しても生活や事業の安全マージンが確保できるかを確認する。
③ 手元資金の流動性を維持したい合理的な理由がある場合にのみ、一括か分割かを検討する。
6|先に「投資できる余剰資金」をつくる
長期運用を続けるうえで重要な前提の一つは、「途中で使う必要のない余剰資金で行うこと」です。
生活費や事業資金、突発的な支出への備えが不足していると、相場が大きく下落しているタイミングで金融資産を現金化せざるを得ない可能性があります。
だからこそ、資金の循環としては次の流れを意識することが大切です。
資本循環の流れ(一つの考え方)
※これは「必ずこの順番でなければならない」という固定的なルールではなく、CORE SPECが提示する一つの考え方です。
計算資源を仕事や制作へ活用し、キャッシュフローの拡大につなげられる場合があります。そこから生活防衛資金や事業資金を確保し、なお手元に残る余剰資金を長期運用へ振り向ける。
こうした循環を設計できれば、現在の仕事を支える計算資源と、長期的な金融資産形成を別の役割として考えることができます。
7|余剰資金を長期運用するなら、NISAとiDeCoも選択肢になる
生活費や事業資金、緊急時の現金を確保した上で、当面使う予定のない余剰資金を長期運用する場合、税制優遇制度であるNISAやiDeCoの活用が検討対象になります。
NISA(少額投資非課税制度)の概要(2026年9月現在)
2026年時点のNISAは、非課税保有期間が無期限化されており、年間最大360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)まで投資が可能です。非課税保有限度額は全体で1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)で、商品を売却した場合はその取得対価分の枠が翌年以降に再利用できます。
NISAでは、保有商品を必要に応じて売却して現金化できます。iDeCoのような原則60歳以降までの資金拘束がない点は、両制度を比較するうえで大きな違いです。ただし、売却時の評価額は市場環境によって変動します。
※本記事冒頭の150万円シミュレーションは制度枠を考慮しない単純比較です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の概要
一方、iDeCoは老後の資産形成を目的とした私的年金制度です。
掛金が全額所得控除になるほか、制度内の運用益は非課税です。受取時には、受取方法に応じて、一時金では退職所得控除、年金では公的年金等控除の対象となります。実際の税負担や控除の適用条件は、個人の状況によって異なります。ただし、原則として受給年齢(60歳等)まで資金を引き出すことができないという強い資金拘束があります。
なお、iDeCoの拠出限度額は公的年金の加入区分によって異なります。2026年12月分(2027年1月引き落とし分)から、iDeCoの拠出限度額は引き上げられる予定です。制度利用時には最新の公式情報をご確認ください。
💡 資金の性質に応じた使い分け
- 途中で取り崩す可能性がある資金: iDeCoと比べると、NISAは売却によって現金化できるため流動性を確保しやすい。
- 原則60歳以降まで使わないことを前提にできる長期資金: iDeCoも選択肢になる。所得控除の効果は課税所得などによって異なる。
NISAやiDeCoを利用する場合は、取扱商品やサービス内容を確認したうえで金融機関を選びます。主要なネット証券として、SBI証券、楽天証券、松井証券などがあります。
※3社に優劣をつけるものではありません。各金融機関の取扱商品やサービス内容の詳細は各公式サイト等をご確認ください。
8|150万円の価値は「何倍になったか」だけでは決まらない
今回のシミュレーションでは、2020年に150万円を投資していた場合、S&P500なら約569万円、オルカンなら約497万円という結果になりました。数字だけを見れば非常に大きなリターンです。
しかし、これは2026年から振り返った過去の実績です。今後も同様の上昇が続く保証はありません。
そして何より、150万円のPCを使って生まれた仕事、完成させた作品、獲得したクライアント、事業の売上も、金融資産の基準価額だけでは測れません。
どちらが得だったかという単純な比較ではなく、
- 現金として流動性・安全マージンに残すのか
- 計算資源として仕事や制作の設備に投資するのか
- 金融資産として価格変動を受けながら長期運用に委ねるのか
それぞれの役割を自覚して配分することが本質です。
まとめ|計算資源では稼ぐ力を、金融資産では時間を味方につける
金融資産のリターンを得るには、短期的な市場の波に惑わされず、長い時間を味方につける必要があります。しかし、そのためには「途中で取り崩さなくて済む余剰資金」を作ることが前提になります。
AI時代において、PCやGPUといった計算資源は、単なる消費ではなく仕事や制作の可能性を広げる設備になり得ます。
計算資源を仕事や制作へ活用し、それが収益や生産性の向上につながった場合、その中から生活防衛資金や事業に必要な現金を確保する。そのうえで残った余剰資金を、NISAやiDeCoなども選択肢に入れながら長期運用へ振り向けていく。
計算資源では「稼ぐ力」を広げる。
金融資産では「時間」を味方につける。
この二つは対立する関係ではありません。自分の仕事環境、家計の余力、リスク許容度を踏まえ、適切な資本配分を組み立てることが重要です。
- 三菱UFJアセットマネジメント:eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
- 三菱UFJアセットマネジメント:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- 金融庁:NISA特設ウェブサイト
- 国民年金基金連合会:iDeCo公式サイト
本記事の留意事項・免責事項
本記事は、過去の市場データを用いたシミュレーションおよび一般的な制度情報の整理を目的としたものであり、特定の金融商品の売買勧誘や投資手法の推奨、将来の成果を保証するものではありません。
投資信託には元本保証がなく、基準価額の変動により投資元本を割り込むおそれがあります。税制の適用条件や最新の制度改正内容については、金融庁、厚生労働省、国民年金基金連合会、各金融機関の公式サイト等をご確認のうえ、ご自身の状況に応じてご判断ください。