生成AIを使って、画像だけでなく動画も自分のPCで作りたい。
そう考えたとき、最初に問題になるのがGPUのVRAM容量です。
画像生成AIでは、VRAM 8GBでも設定を工夫すれば動かせるモデルがあります。しかし、動画生成AIでは複数のフレームを同時に処理し、時間方向の一貫性も保つ必要があります。そのため、画像生成よりもVRAMへの要求が高くなりやすく、同じGPUでも生成できる解像度や長さ、使用できるモデルが大きく制限されます。
では、ローカル環境で動画生成AIを動かすには、どのくらいのVRAMが必要なのでしょうか。
先に結論を述べると、CORE SPECでは、
ローカル動画生成AIを新しいPCで始めるなら、VRAM 16GBを実用的なスタートラインとして考える
ことをおすすめします。
VRAM 8GBや12GBでも、軽量なモデルや省メモリ設定によって動画を生成できる場合はあります。しかし、モデル、解像度、フレーム数、量子化、CPUオフロードの有無によって必要容量は大きく変わります。
また、VRAM 32GBのRTX 5090であっても、すべての動画生成モデルを標準設定のまま動かせるわけではありません。
この記事では、Wan2.2、HunyuanVideo-1.5、LTX系などの公開情報をもとに、VRAM 8GB・12GB・16GB・24GB・32GBでできることと、動画生成AI向けGPUの選び方を解説します。
※本記事は、各モデルの開発元や公式ドキュメントが公表している動作要件をもとにした購入判断です。同一条件での実測比較ではありません。必要VRAMは、使用する実装、モデルのバージョン、解像度、フレーム数、量子化方法などによって変わります。
結論:動画生成AIの実用的な入口はVRAM 16GB
ローカル動画生成AIにおけるVRAM容量の位置づけをまとめると、次のようになります。
| VRAM容量 | CORE SPEC評価 | 動画生成AIでの位置づけ |
|---|---|---|
| 8GB | × | 特殊な省メモリ構成を試す段階 |
| 12GB | △ | 軽量モデル・低解像度・短尺の実験向け |
| 16GB | ○ | ローカル動画生成AIの実用的な入口 |
| 24GB | ◎ | 720pや大型モデルの選択肢が広がる |
| 32GB | ◎+ | 個人向けGPUでは最も広い選択肢 |
| 80GB級 | 業務・研究 | 大規模モデルの公式構成やクラウドGPU領域 |
この評価は、すべてのモデルに共通する絶対的な動作要件ではありません。
たとえば、Diffusersに掲載されている従来のLTX-Videoの省メモリ構成には、約10GBのVRAMで動かす例があります。一方、HunyuanVideo-1.5の公式実装は、モデルオフロードを有効にした状態で最低14GBを要件としています。LTX Desktopは、ローカル生成の要件を16GB以上としています。
さらに、Wan2.2の公式実装では、TI2V-5Bモデルを720pで動かす構成に最低24GB、T2V・I2Vの14Bモデルには単一GPUで最低80GBが必要とされています。
つまり、動画生成AIに必要なVRAMを一つの数字で表すことはできません。
そのうえで、新しくPCを購入し、特定の軽量モデルだけでなく複数の動画生成AIを試したいのであれば、8GBや12GBではなく、16GB以上から検討するのが現実的です。
なぜ動画生成AIは画像生成より重いのか
画像生成AIでは、基本的に一枚の画像を生成します。
一方、動画生成AIでは、複数の画像に相当するフレームを処理しながら、被写体の形、動き、カメラワーク、背景などを時間方向に維持する必要があります。
Hugging FaceのDiffusersでは、動画生成は多数のフレームをまとめて生成するため、画像生成で大きなバッチを処理する場合に近く、メモリ負荷が高いと説明されています。フレームを分割してデコードする方法もありますが、メモリ削減と引き換えに処理時間や映像の安定性へ影響する場合があります。
動画生成AIの負荷を左右する主な要素は、次のとおりです。
- 使用するモデルの規模
- 動画の解像度
- 生成するフレーム数
- 動画の長さ
- Text-to-VideoかImage-to-Videoか
- 音声も同時に生成するか
- Control系モデルやLoRAを併用するか
- モデルをどの精度で読み込むか
- CPUオフロードや量子化を使うか
特に、解像度とフレーム数を上げると、処理しなければならないデータ量が増えます。
低解像度の数秒動画を1本生成できたとしても、解像度を720pへ上げたり、より長い動画を作ったり、複数のモデルを組み合わせたりすると、同じGPUではVRAM不足が発生する可能性があります。
そのため、
動画を1本出力できたことと、動画生成AIを制作環境として継続的に使えることは別
と考える必要があります。
動画生成AIの「必要VRAM」が一つに決まらない理由
動画生成AIについて調べると、
- 10GBで動いた
- 16GB以上必要
- 24GBが最低ライン
- 80GBのGPUが必要
といった、異なる情報が見つかります。
これらは必ずしも矛盾しているわけではありません。使用しているモデルや実装条件が異なるためです。
モデルの規模が違う
動画生成モデルには、比較的軽量なものから、数十億~百億規模のパラメータを持つ大型モデルまであります。
同じWan2.2でも、TI2V-5Bと14Bモデルでは必要なVRAMが大きく異なります。Wan2.2の公式リポジトリでは、5Bモデルの720p生成は24GB以上、14Bモデルは80GB以上のGPUを要件としています。
数値精度や量子化方法が違う
AIモデルは、FP32、FP16、BF16、FP8、8bit、4bitなど、異なる精度で読み込めます。
精度を下げたり量子化したりすることで、モデルが使用するメモリを削減できます。ただし、モデルや量子化方式によっては、画質、安定性、処理速度、利用できる機能に影響する可能性があります。
CPUオフロードの有無が違う
モデル全体をVRAMへ置けない場合、一部をメインメモリへ移すCPUオフロードを利用できます。
CPUオフロードによって必要VRAMを減らせますが、CPUとGPUの間でデータを移動するため、処理速度は低下します。つまり、
オフロードを使えば動かせることと、VRAM内で高速に処理できることは同じではない
ということです。
解像度とフレーム数が違う
同じモデルでも、480pと720pでは必要なメモリ量が異なります。
「生成できた」という報告を見るときは、モデル名だけでなく、解像度、フレーム数、秒数、FPS、量子化、オフロード、使用したUIや実装まで確認する必要があります。
主要な動画生成AIモデルのVRAM要件
公開されている公式情報を整理すると、モデルによって必要なVRAMには大きな差があります。
| モデル・実装 | VRAM要件・例 | 条件 |
|---|---|---|
| LTX-Video | 約10GB | 省メモリ構成Diffusersのオフロード等活用 |
| HunyuanVideo-1.5 | 最低14GB | 公式実装最低14GB・モデルオフロード有効・公式実装はLinux |
| LTX Desktop | 16GB以上 | 公式実装最低16GB・32GB以上推奨 |
| Wan2.2 TI2V-5B | 最低24GB | 公式実装720p・オフロード等を使用 |
| Wan2.2 T2V/I2V 14B | 最低80GB | 公式標準公式の単一GPU実装 |
※要件は各モデルの公開ドキュメント等に基づく。アップデートにより変更される可能性があります。
ここで注意したいのは、この表が単純な性能ランキングではないことです。
約10GBで動くLTX-Videoの例がある一方、Wan2.2の14Bモデルは80GBを必要とします。したがって、「VRAM 16GBなら動画生成AIがすべて動く」「VRAM 32GBならどのモデルでも自由に使える」とはいえません。
一方で、VRAM容量が多いほど、
- オフロードへの依存を減らせる
- より大きなモデルを選びやすい
- 解像度やフレーム数を上げやすい
- 複数の処理を組み合わせやすい
- 将来のモデルへ対応しやすい
というメリットがあります。
VRAM 8GBで動画生成AIはできる?
VRAM 8GBでも、特殊な省メモリ構成やコミュニティによる最適化を利用し、動画を生成できる可能性はあります。しかし、新しくローカル動画生成AI用のPCを購入する場合、VRAM 8GBのGPUはおすすめしません。
8GBでは、使用できるモデルが限定され、解像度やフレーム数を下げる必要があります。CPUオフロードへの依存が大きくなり、ComfyUIで複数の処理を組み合わせたり、新しいモデルへ対応することが難しくなります。
RTX 5050とRTX 5060はいずれもVRAM 8GBです。RTX 5060はRTX 5050より演算性能が高いため、同じ構成をより速く処理できる可能性がありますが、8GBに収まらない処理を速度だけで解決することはできません。
VRAM 8GBは、「ゲームや一般作業を主目的にしながら、軽量な動画生成AIも実験してみたい」という使い方なら選択肢になります。
VRAM 12GBで動画生成AIはできる?
VRAM 12GBは、8GBより選択肢が広がります。
DiffusersにはLTX-Videoを約10GBで動かす省メモリ例があるため、軽量なモデルや最適化された構成であれば12GBでも動画生成を試せます。ただし、12GBは余裕のある容量ではありません。解像度やフレーム数を上げたり、複数のモデルを組み合わせたりするとVRAM不足に直面する可能性があります。
RTX 5070はVRAM 12GBを搭載しています。RTX 5060 Tiより演算性能は高い一方、RTX 5060 Tiには16GBモデルがあります。動画生成AIを主目的にする場合、RTX 5070の速度を取るか、RTX 5060 Ti 16GBの容量を取るかを考える必要があります。
VRAM 16GBは動画生成AIの実用的な入口
CORE SPECでは、VRAM 16GBをローカル動画生成AIの実用的なスタートラインと考えます。
HunyuanVideo-1.5の公式実装はモデルオフロード有効時で最低14GB、LTX Desktopはローカル生成に16GB以上を求めています。16GBあればすべてのモデルを自由に動かせるわけではありませんが、8GBや12GBと比べると、
- 軽量モデルを選びやすい
- 480pを中心とした動画生成を試しやすい
- オフロードへの依存を減らしやすい
- ComfyUIのワークフローを拡張しやすい
- 生成AI以外の映像制作にも使いやすい
という違いがあります。
RTX 50シリーズでは、以下のGPUに16GB構成があります。
RTX 5060 Ti 16GB
予算を抑えて16GB環境を作れることが最大の利点です。生成速度よりも、まず動画生成AIを動かせる範囲を広げたい人に向いています。
RTX 5070 Ti 16GB
VRAM容量と演算性能のバランスがよく、動画生成AIだけでなく、動画編集、3DCG、ゲームなども幅広く扱いやすいGPUです。クリエイター向けPCとしては現実的な上位選択肢です。
RTX 5080 16GB
演算性能が高いため、同じモデルや設定をより高速に処理できることが期待できます。ただしVRAMが16GBであることは変わりません。動かせるモデルの上限を大幅に増やすというより、16GBに収まる動画生成処理をより高速に行うGPUとして考えると分かりやすいでしょう。
VRAM 24GBでは何が変わる?
VRAM 24GBになると、動画生成AIの選択肢はさらに広がります。
Wan2.2の公式実装では、TI2V-5Bモデルを720pで生成する構成に、最低24GBのVRAMを持つGPUが例示されています。24GBあれば16GBでは収まりにくいモデルを選びやすくなり、オフロードへの依存を減らせる場合があります。ただし、モデルによっては24GB環境でもCPUオフロードが必要です。代表的な24GB GPUとしては前世代のRTX 4090があります。
VRAM 32GBのRTX 5090は必要?
RTX 5090は32GB GDDR7を搭載しています。現行の一般消費者向けGeForceとしては、動画生成AIのモデル選択肢を最も広げやすいGPUです。
32GBあれば、複数モデルを使うComfyUI構成を組みやすく、動画生成とアップスケールなどを組み合わせやすくなります。本格的にローカル動画生成AIを使い続けるのであれば、RTX 5090は有力な選択肢です。
ただし、RTX 5090でも万能ではありません。Wan2.2の14Bモデルは公式の単一GPU実装で最低80GBを要件としています。大規模モデルでは量子化やオフロード、クラウドGPUの利用などが必要になります。RTX 5090は「すべての動画生成AIを無制限に動かせるGPU」ではなく、「個人が購入できるGPUの中で、制約を最も減らしやすいGPU」と考えるのが適切です。
動画生成AI向けRTX 50シリーズ比較
| GPU | VRAM | 動画生成AIでの位置づけ |
|---|---|---|
| RTX 5050 | 8GB | 軽量な実験向け。主目的には非推奨 |
| RTX 5060 | 8GB | 速度は向上するが容量の限界が残る |
| RTX 5060 Ti | 16GB | 低予算で始める有力な入口 |
| RTX 5070 | 12GB | 高速だが、VRAM容量に注意 |
| RTX 5070 Ti | 16GB | AI・映像制作のバランス型 |
| RTX 5080 | 16GB | 16GBに収まる処理を高速化 |
| RTX 5090 | 32GB | 本格的なローカル動画生成向け |
VRAM不足を軽減する方法
- CPUオフロードを使う:メインメモリにデータを逃がしVRAMを節約しますが、転送のたびに処理速度が低下します。
- モデルオフロードを使う:モデル全体を構成要素ごとにGPUへ移動し、速度とのバランスを取ります。
- 量子化モデルを使う:FP8や4bitなどに変換してメモリを節約します。
- フレーム数や解像度を下げる:試行錯誤の速度を上げ、採用する動画だけをアップスケールします。
よくある質問
VRAM 8GBでも動画生成AIは動きますか? +
メインメモリを増やせばVRAM不足を補える? +
ローカルPCとクラウドGPUはどちらがよい? +
RTX 5070 12GBとRTX 5060 Ti 16GBはどちらが向いていますか? +
RTX 5060 Ti 16GBでWan2.2は使えますか? +
まとめ:16GBは入口、32GBでも万能ではない
ローカル動画生成AIに必要なVRAMは、モデルによって大きく異なります。
VRAM 8GBは実験向け。12GBは軽量モデル向け。16GBは実用的な入口。24GBで選択肢が広がり、32GBは個人向けとして最も余裕がある。ただし、32GBでもすべての大型モデルを標準構成のまま動かせるわけではない。
予算を抑えて動画生成AIを始めるなら、RTX 5060 Ti 16GB。
AIと動画編集、3DCGなどを幅広く扱うなら、RTX 5070 Ti 16GB。
16GBに収まる動画生成処理の速度を重視するなら、RTX 5080。
本格的なローカル動画生成環境を作り、モデルや設定の制約をできるだけ減らしたいなら、RTX 5090が有力です。