椅子の高さを調整すると、キーボードへ自然に手を置ける。
ところが今度は、足が床から浮いてしまう。
だから椅子を下げると、机が高くなり、肩や腕の位置が合わなくなる。
PC環境を整えていると、こうした「どちらを合わせても、もう一方が合わない」という問題が起こります。
原因は身体ではありません。机・椅子・身体の寸法が一致していないだけです。
そのズレを足元側から埋めるための道具が、フットレストです。
この記事では、フットレストが必要になる条件と、固定式・高さ調整式・傾斜式・クッションタイプなどの違いを、長時間PCを使う人の作業環境という視点から整理します。
結論:椅子を適切な高さへ上げると足が届かない人に、フットレストは有効
フットレストは、誰にでも必要なPC周辺機器ではありません。
椅子を適切な位置へ調整した状態で、足裏を床へ自然に置けるのであれば、基本的にはそれで問題ありません。
フットレストを検討したいのは、キーボードや机の高さに合わせて椅子を上げると、足が床へ十分届かなくなる場合です。
厚生労働省の情報機器作業に関するガイドラインでも、座位では足裏全体が床へ接する姿勢を基本とし、必要に応じて十分な広さと滑りにくさを備えた足台を用意する考え方が示されています。
つまりフットレストは、身体を矯正する道具ではなく、机・椅子・身体寸法のズレを足元で補正するための作業環境部品として考えると分かりやすくなります。
1.なぜ「机に合わせると足が浮く」のか
一般的なデスクには、使用する人の身長に合わせて高さを変えられないものが多くあります。
一方、オフィスチェアは高さを調整できます。すると実際の作業では、
- 机の高さは固定(約70〜72cm)
- 腕の位置に合わせて椅子を上げる
- 足が床へ届きにくくなる
という構造が生まれます。
特に、小柄な人、高めの固定デスクを使っている、厚い天板のデスクを使っている、キーボード位置が高い、高さ調整幅の小さい椅子を使っている場合に起こりやすい問題です。
2.椅子を下げれば解決するとは限らない
足が浮くなら、椅子を下げればよい。一見すると簡単です。
しかし椅子を下げると、今度は机との関係が変わります。たとえば、
- キーボードへ手を置く位置が高くなる
- 肘が机よりかなり低くなる
- マウスを操作するために腕を持ち上げる
- モニター位置まで相対的に高くなる
ことがあります。
そこで、「上半身に合わせた椅子位置は維持し、足元だけを持ち上げる」という考え方が出てきます。これがフットレストの役割です。
3.まずフットレストを買う前に、調整する順番を確認する
フットレストを最初から置く必要はありません。CORE SPECでは、次の順番で身体環境を調整することをおすすめします。
STEP 1 椅子を机・キーボードへ合わせる
まず、キーボードやマウスへ自然に手を置ける位置を探します。腕を大きく持ち上げたり、身体を机へ寄せすぎたりしない位置を基準にします。
STEP 2 足裏を確認する
その状態で足が床へ自然に届くなら、フットレストは必須ではありません。足が浮く、つま先だけが届くなどの場合は、足元の支持方法を検討します。
STEP 3 フットレストで高さを埋める
足台を置き、足裏を置ける位置を作ります。
つまり、「フットレストに身体を合わせるのではなく、すでに決めた作業姿勢へフットレストを合わせる」のが基本です。
4.「差尺」で考えると分かりやすい
机と椅子の高さは、それぞれ単独で見るより、高さの差で考えると分かりやすくなります。家具の世界では、天板と座面の高さの差を「差尺」と呼ぶことがあります。
たとえば同じ高さ70cmのデスクでも、座面40cm、45cm、50cmでは上半身から見た机の位置が変わります。一方、座面を上げれば足元の床は相対的に遠くなります。
そのため、
- 机が高いから椅子を上げる
- 足元が足りなくなる
- フットレストで床を持ち上げる
という考え方になります。フットレストとは、言ってしまえば「自分専用の床を少し高くする道具」です。
5.フットレストには大きく4タイプある
フットレストは、見た目以上に種類があります。
① 固定タイプ
最もシンプルです。一定の高さを持つ台に足を置きます。構造が単純で安定しやすく、価格を抑えやすいのが特徴です。自分に必要な高さが分かっている人に向いています。
② 高さ調整タイプ
複数段階で高さを変えられるタイプです。椅子の高さ変更に対応しやすく、最初の一台として調整しやすいのがメリットです。昇降デスクや高さ調整椅子と組み合わせるなら扱いやすい選択肢です。
③ 傾斜・可動タイプ
足を置く面に角度がついていたり、足の動きに合わせて角度が変わったりするタイプです。好みの角度に合わせやすく、PC作業中に足の位置を頻繁に変えたい人には候補になります。
④ クッションタイプ
硬い台ではなく、フォームやクッション素材を使ったものです。足触りが柔らかく裸足・靴下で使いやすい一方、沈み込みによって実際の高さが変わる点に留意します。
6.フットレスト選びで最初に見るのは「高さ」
フットレストというと、デザイン、素材、マッサージ突起、クッション性などに目が向きます。しかし身体環境として最優先なのは、「必要な高さを作れるか」です。
高すぎれば膝が持ち上がりすぎます。低すぎれば、そもそも足裏を十分支えられません。そのため、初めて購入する場合は高さ調整できる製品の方が合わせやすくなります。
7.次に見るのは「足を動かせる広さ」
足を一点へ固定するような小さな台より、左右の足を自然に置き、多少位置を変えられる広さがある方が使いやすい傾向があります。
確認したいのは、横幅、奥行、両足を置いたときの余裕、滑り止め、床上で本体が動かないかです。厚生労働省のガイドラインでも、必要に応じて使用する足台について、十分な広さと滑りにくさが求められています。
8.デスク下スペースも確認する
意外に見落としやすいのが、デスク下の空間です。フットレストを置く場所には、デスクの脚、PC本体、電源タップ、ケーブル、キャスター、引き出しなどがあります。
特に大型のデスクトップPCを机の下へ置いている場合、幅広のフットレストと干渉することがあります。購入前に「デスク下の横幅 × 奥行 × 脚を動かすスペース」を確認してください。
9.昇降デスクならフットレストは不要?
昇降デスクがあれば、机側の高さを身体へ合わせることができます。そのため固定デスクよりも、フットレストが必要になる場面を減らせる可能性があります。
ただし、デスクの最低高が十分低くならない場合や、椅子の最低座面高が高い場合、身長との組み合わせによっては、昇降デスクでも足元調整が必要になる場合があります。身体と家具の組み合わせで判断します。
10.オットマンとは目的が違う
フットレストとオットマンは似ていますが、PC作業中の役割は違います。
- フットレスト:作業姿勢で足裏を支持する。
- オットマン:リクライニング時などに脚全体を伸ばして休む。
長時間作業用の椅子としてオットマン付きチェアを選ぶ場合でも、通常作業時の足元と休憩姿勢の脚置きは分けて考えた方がよいでしょう。
11.フットレストは「姿勢改善グッズ」として選ばなくてよい
商品ページを見ると、「姿勢」「疲労」「健康」といった言葉が並ぶことがあります。しかしCORE SPECでは、もっと単純に考えます。
フットレストに求めるのは、「足を置きたい高さに、安定した面を作れること」です。見るべきスペックは、高さ、調整幅、足置き面積、傾斜、滑りにくさ、デスク下に収まるかです。
12.こんな人なら検討する価値がある
フットレストを検討しやすいのは、次のようなケースです。
- 椅子を机に合わせると足が床に届かない
- 高めの固定デスクを使っている
- 小柄で一般的な机の高さが合いにくい
- 椅子をこれ以上下げると腕の位置が合わない
- オフィスと自宅で違う机を使う
- 家族で同じデスクを共有している
反対に、椅子の高さを適切に設定でき、足裏を床へ自然に置けるのであれば、無理に追加する必要はありません。
作業環境に合わせたおすすめフットレスト3選
広告・PR机や椅子の高さ、作業スタイルに合わせて選びやすい3つの代表的なフットレストを紹介します。
サンワダイレクト フットレスト オットマン 3WAY
- 3WAY仕様(足台 / オットマン / 傾斜台)
- クッション付き天板で足裏・ふくらはぎを支持
- 角度・高さ調整可能
- デスク下の空間を有効活用
通常の足台としての使用に加え、足を伸ばすオットマンや傾斜台としても使える多機能モデル。長時間の作業中に足の置き方を変えたい人に向いています。
HUANUO(ファーノー) フットレスト
- 3段階の高さ調整(約9 / 12 / 15cm)
- 角度調整対応(最大約30度)
- ローラー&滑り止め突起付き表面
- 高耐久ABS樹脂製
高さと傾斜を調整できる定番の硬質フットレスト。手頃な価格ながら足裏をしっかり支える剛性があり、最初の一台として扱いやすいモデルです。
セノビィ フットレスト
- ワイド設計で両足を自然に置ける
- 無段階傾斜調整で足首の自由度を確保
- 滑りにくい表面加工
- オフィス・自宅兼用のコンパクト設計
幅広設計で左右の足をゆったり置けるフットレスト。足の動きに合わせて自然に傾斜角度が変わるため、長時間のPC作業で足の位置を動かしやすいのが特徴です。
13.身体環境は、椅子だけでは完成しない
良いオフィスチェアを買えば、長時間PC環境が完成する。そう考えたくなりますが、実際には椅子だけでは決まりません。
- 椅子 → 座る高さを決める(→ シリーズ第1回「オフィスチェアの選び方」)
- デスク → 腕を置く高さを決める(→ シリーズ第2回「PCデスクの選び方」)
- モニター → 視線の位置を決める(→ シリーズ第4回「モニターの高さ・距離」)
- フットレスト → 足元の高さを調整する
というように、それぞれがつながっています。一つずつ高性能なものを買うより、身体との位置関係がつながっているかを見ることの方が重要です。
まとめ:フットレストは「必要な人だけが使う調整部品」
フットレストは、PC作業をする全員が買うべきものではありません。
- 椅子を作業に適した高さへ調整する
- 足裏を床へ置けるか確認する
- 届かなければ、足元側を持ち上げる
この最後の部分を担うのがフットレストです。選ぶ際は、「必要な高さを作れる」「両足を置ける十分な広さがある」「滑りにくい」「デスク下へ収まる」「必要なら傾斜や高さを調整できる」という順番で考えれば十分です。
参考にした公的情報:
• 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」
• OSHA(米国労働安全衛生局)「Computer Workstations」
※本記事は作業環境の設計・調整を目的とした一般情報です。身体の痛みや不調が続く場合は、必要に応じて専門家へ相談してください。
身体環境シリーズ
座面高・奥行・前傾・机との高さ関係
天板サイズ・奥行・昇降範囲・耐荷重
常用ではなく一時的な姿勢変更の選択肢
目線・視距離・アーム・デュアル配置
机と椅子の高さが合わないときの足元環境