スペック表の数値比較にとどまらず、「計算資源をどう持ち、何に使い、どのような価値へ変換するか」を用途から考えるシリーズです。 第13回は、Ryzen AI Max+ 395やMac Studioの大容量ユニファイドメモリを、ローカルLLM用途と実際に購入できるPCの選択肢から整理します。
計算資源シリーズ一覧を見る →ローカルLLM用のPCを探していると、「128GBメモリを搭載したミニPC」という、少し不思議な製品に出会います。
GeForce RTX 5090のVRAMは32GBです。それに対して、Ryzen AI Max+ 395搭載PCでは128GB、Mac Studioではさらに大容量のユニファイドメモリを選択できます。
ただし、ここで注意したいのは、
128GBだから、RTX 5090の32GBより4倍高速という意味ではない
ということです。
RTX 5090の32GB GDDR7はGPU専用の高速なVRAMです。一方、Ryzen AI MaxやApple Siliconのユニファイドメモリは、CPU・GPUなどが大きなメモリ空間を共有する仕組みです。
ローカルLLMでは、処理速度だけでなく「使いたいモデルがメモリに収まるか」が重要になります。
そこで本記事では、大容量ユニファイドメモリを利用できるPCの中から、用途の異なる5機種に絞って比較します。
30秒で分かる:どのユニファイドメモリPCを選ぶ?
先に用途別の結論を整理します。
| 目的 | 候補 |
|---|---|
| できるだけシンプルにRyzen AI Max+ 395を導入したい | GMKtec EVO-X2 |
| 128GBに加え、OCuLinkやストレージ拡張も重視 | GMKtec EVO-X3 |
| 10GbE・PCIeを使い、AI開発機として本格運用したい | MINISFORUM MS-S1 MAX |
| ISV認証・法人保守・業務利用を重視 | HP Z2 Mini G1a |
| macOS・MLX・Apple Siliconを使いたい | Mac Studio M5 Ultra |
この5機種に単純な「1位〜5位」は付けません。
同じ大容量メモリPCでも、個人のローカルAI環境、AI開発機、法人ワークステーション、Apple Siliconでは、求められる役割が違うからです。
そもそもユニファイドメモリとは?
一般的なRTX搭載PCでは、
- CPU → DDR5などのシステムRAM
- GPU → GDDR7などの専用VRAM
と、CPUとGPUのメモリが物理的・論理的に分かれています。
一方、Ryzen AI MaxやApple Siliconでは、大容量のメモリ空間をCPUとGPUが共有します。
つまり重要なのは、
メモリ容量 ≠ GPU性能
ということです。
RTX 5090は32GBという容量ながら、非常に高速なGPU専用VRAMとCUDA環境を持っています。
一方、Ryzen AI Max+ 395の128GB構成では、AMDのVariable Graphics Memoryを使って最大96GB規模をグラフィックス用途に設定できます。AMDも128GB構成のRyzen AI Max+ 395について、96GBのVariable Graphics Memoryを大規模LLM用途の特徴として説明しています。(AMD公式)
そのため、
- 高速なGPU演算が必要ならRTX
- 大きなモデルを一台のメモリ空間へ収めたいなら大容量ユニファイドメモリ
という違いが生まれます。
MacのユニファイドメモリとRTX専用VRAMの違い、CUDA環境と帯域のトレードオフは別記事で徹底検証しています。あわせてご覧ください。
Mac StudioとRTXをローカルLLM用途で比較する →
大容量ユニファイドメモリPC 5機種詳細
GMKtec EVO-X2 AMD Ryzen™ AI Max+ 395 ミニPC
Ryzen AI Max+ 395と最大128GBの大容量共有メモリを比較的シンプルな構成で導入できる。RTX制作PCとは別に、ローカルLLM・RAG・コーディングAI・AIエージェントを受け持つ2台目として使いやすい。
2.5GbEまでで、OCuLinkや10GbEは搭載しない。拡張性や高速ネットワークを重視する場合はEVO-X3やMS-S1 MAXも比較したい。
Ryzen AI Max+ 395の大容量メモリ環境を、比較的シンプルな構成で導入できるのがGMKtec EVO-X2です。GMKtec公式でも128GB構成を用意しています。
本記事で注目したいのは128GBモデルです。RTX搭載PCの代替として考えるのではなく、メインPCで制作やゲームを動かしながら、ローカルLLM、RAG(検索拡張生成)、コーディングAI、AIエージェント常時稼働、長文資料・PDF解析などを受け持つ「AI用の2台目」と考えると、Ryzen AI Maxの特徴を活かしやすくなります。
128GB級の共有メモリを使うこと自体が目的なら、最初に比較したい基準機です。ローカルLLM、RAG、コーディングAIなどをRTX制作PCとは別のマシンへ分離したい場合に使いやすく、OCuLinkや10GbEを必要としないなら、より高価なモデルへ上げる理由は小さくなります。
- Ryzen AI Max+ 395をまず試したい人
- 128GBの大容量統合メモリを使いたい人
- RTX制作PCとは別にAI専用機を置きたい人
- OCuLinkや10GbEまでは必要ない人
GMKtec EVO-X3 AMD Ryzen™ AI Max+ 395 ミニPC
EVO-X2と同じRyzen AI Max+ 395 / 128GB構成に、OCuLinkと4TB SSDを加えた拡張性重視モデル。
EVO-X2との差額は約6.6万円。OCuLinkや4TB SSDを実際に使うかどうかで判断する。
EVO-X3は、EVO-X2と同じRyzen AI Max+ 395とRadeon 8060S、128GB LPDDR5X-8000を搭載しながら、OCuLink端子や大容量ストレージなど拡張性を強化したモデルです。
EVO-X2との違いは、OCuLink端子の搭載と大容量4TB SSDを含む拡張性です。EVO-X2(通常価格583,000円)との差額は約6.6万円ですが、単純な上下関係というより「4TB SSDの大容量ストレージや外部GPU・拡張Box接続用のOCuLinkが必要か」という構成要件の違いとして判断するのが適切です。ローカルLLM専用機として完結させるならX2でも十分ですが、将来の拡張や大容量データ運用まで考えるならX3が有力な選択肢になります。
EVO-X2の性能思想を維持したまま、ストレージと外部拡張性を強化したモデルです。AI専用機として完結するだけならX2でも十分ですが、OCuLinkや4TB SSDを使う明確な理由があるならX3を選ぶ意味があります。
- 最初から128GBメモリを選びたい人
- OCuLinkが欲しい人(外部GPU・拡張Boxの接続)
- 最初から4TBの大容量SSDを確保したい人
- AI用PCを将来拡張したい人
MINISFORUM MS-S1 MAX Ryzen AI Max+ 395搭載AIワークステーション
128GB UMAに10GbE×2、USB4 V2、PCIe拡張を組み合わせ、小型AIワークステーション/AIサーバーとして使いやすい。
単純なミニPC用途ではI/Oが過剰になりやすい。別PCからAIサーバーとして常時利用する構成で価値が出やすい。
単なるミニPCよりも、小型AIワークステーションに近いのがMINISFORUM MS-S1 MAXです。MINISFORUM公式でも128GB RAM / 2TB SSDモデルがラインナップされており、128GBのUMAをローカルAIとクリエイティブ用途の特徴として位置づけています。
この機種の最大の特徴は、10GbE LANを2ポート標準搭載している点です。さらにPCIe 4.0 x4スロットやUSB4 V2(80Gbps)ポートも備えており、単なる「小型デスクトップ」というより「小型AIサーバー」と呼ぶべき仕様です。
── 10GbE LAN ──>
MS-S1 MAX(AIサーバー)
たとえば上記の構成にして、RTX側ではBlender、TouchDesigner、ComfyUI、DaVinci Resolveなどを動かし、MS-S1 MAX側ではLLMやRAG、AIエージェントを常時動作させるような運用が考えられます。手元の作業環境に負荷をかけず、ネットワーク経由で大容量LLMを呼び出す構成です。
5機種の中でも、AIを「別PCから使う計算サービス」として運用したい人に向く構成です。10GbE×2とPCIe拡張を活かし、RTX制作機とは別にLLM・RAG・AIエージェントを常時稼働させる用途で価値が大きくなります。
- AI処理を「ローカルサーバー」として運用したい人
- メインPCとは別に常時起動の推論エンドポイントを作りたい人
- 10GbE環境がすでに整っている人
- 拡張カード(キャプチャボードや追加ストレージ)を使いたい人
HP Z2 Mini G1a Workstation
Ryzen AI Max+ PRO 395 / 128GBに加え、ISV認証、3年オンサイト保守、法人向けサポートを含む業務用ワークステーション。
価格は約285万円と突出して高い。Ryzen AI Max+ PRO 395そのものではなく、保守・認証・業務運用の確実性まで含めた価格として判断する。
HP Z2 Mini G1aは、同じRyzen AI Max系でもGMKtecやMINISFORUMとは根本的に立ち位置が異なる法人市場向けのワークステーションです。
上位構成(モデル17)では、Ryzen AI Max+ PRO 395(16コア)、Radeon 8060S(40CU)、128GB LPDDR5X-8000、2TB NVMe SSD、ISV認証、3年翌営業日オンサイト保証を選択できます。HPは128GB構成について、最大96GBをグラフィックスメモリとして割り当て可能と明記しています。(HP公式製品情報)
128GB+2TB(モデル17)の構成は、HP希望販売価格で2,854,500円(税込)です。つまりRyzen AI Max+ PRO 395そのものに約285万円の価値があるという話ではなく、主要業務用ソフトウェアのISV認証、法人向け手厚いサポート体制、3年間のオンサイト保守、堅牢な業務用筐体・エアフロー設計、強固なハードウェアセキュリティまで含めたエンタープライズ価格です。企業の開発部門や研究機関が「業務を止められない環境」で導入するための選択肢です。
性能単価で選ぶ製品ではありません。ISV認証、オンサイト保守、法人サポートまで含めて、業務停止リスクを下げたい企業・制作会社・研究機関向けの選択肢です。
- 企業・制作会社・研究機関で導入する人
- CADや制作ツールのISV認証が必要な人
- トラブル時の翌営業日オンサイト保守を含めてPCを選びたい人
- 個人向けミニPCより業務運用の確実性を最優先する人
※価格・セール・構成・在庫は2026年9月30日確認時点。最新情報は販売ページをご確認ください。
Mac Studio M5 Ultra
Apple Siliconと大容量ユニファイドメモリ、MLX、macOSの制作環境を一台で統合できる。
CUDAを必要とするComfyUI・3DCG・AI開発ワークフローではRTX環境と同じ使い方はできない。Apple Silicon向け環境を使うかどうかが判断軸。
Apple Siliconは、大容量ユニファイドメモリを代表する存在です。Apple公式スペックでも仕様を確認できます。
ここで紹介するソフマップ掲載モデルは、M5 Ultra(64コアGPU)・96GBユニファイドメモリ・1TB SSDの構成です。商品名に含まれる「64G」はメモリ容量ではなくGPUコア数(64コアGPU)を指しており、メモリは96GBを搭載しています。
Macを選ぶ最大の理由は、単純なメモリ容量ではありません。macOSのエコシステム、Apple Silicon最適化、MLXフレームワークによる高速推論、Mac向け各種AI・制作アプリ、映像・音楽・デザイン制作との高度な両立を、一台の完成された環境で実現できることにあります。CUDAを必須とするワークフローならRTXを優先すべきですが、Apple Silicon向けの実行環境を使うなら、Mac Studioは独自の強力な選択肢になります。
プロ向けGPU「RTX PRO 5500(84GB)」とMac Studio M5 Ultraの比較は、別記事で詳細に整理しています。
Mac StudioとRTX PROをAIワークステーションとして比較する →
単純なメモリ容量ではなく、Apple Silicon・MLX・macOSを含めた実行環境そのものを選ぶ製品です。AIと映像・音楽・デザイン制作をMac上で統合したいなら強い選択肢ですが、CUDAが必要ならRTXを優先します。
- 普段からmacOSを主制作環境として使っている人
- MLXを使って大規模ローカルLLMを動かしたい人
- Apple Silicon対応のローカルAI環境を構築したい人
- AIだけでなく映像・音楽・デザインまで一台で完結させたい人
- 静音性を重視して制作・AI環境を構築したい人
※価格・セール・構成・在庫は2026年9月30日確認時点。最新情報は販売ページをご確認ください。
5機種の違いを整理
| 製品 | CPU / SoC | メモリ | 価格 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|
| GMKtec EVO-X2 | Ryzen AI Max+ 395 | 128GB構成あり | 583,000円 | シンプルなAIミニPC |
| GMKtec EVO-X3 | Ryzen AI Max+ 395 | 128GB | 649,100円 | OCuLink・拡張性 |
| MINISFORUM MS-S1 MAX | Ryzen AI Max+ 395 | 128GB | 659,999円 | 10GbE×2・PCIe |
| HP Z2 Mini G1a モデル17 | Ryzen AI Max+ PRO 395 | 128GB | 2,854,500円 | ISV認証・法人保守 |
| Mac Studio M5 Ultra | M5 Ultra | 96GB(掲載商品) | 949,800円 | macOS・MLX・制作兼用 |
※価格は2026年9月30日確認時点。各製品でSSD容量・保証・OS・I/O・法人サポートなど構成条件が異なります。単純な価格性能比較ではなく、用途別の目安として掲載しています。
スペックだけを見ると、Ryzen AI Max+ 395搭載機は似ています。
しかし実際に選ぶときは、
どのCPUを積んでいるかだけでなく、その計算資源をどんな筐体・I/O・保証・OSで使うか
まで見る必要があります。
RTX制作PC+AIミニPCという使い方もある
大容量ユニファイドメモリPCを買うからといって、RTXをやめる必要はありません。
むしろ制作環境では、
- RTX PC:高速なGPU演算(CUDA)
- Ryzen AI Max PC:大容量メモリを使うAI処理
と役割を分ける方法があります。
たとえば、
- Blender / Cycles レンダリング
- TouchDesigner リアルタイム映像
- ComfyUI 画像生成
- DaVinci Resolve カラーグレーディング
- CUDA 最適化処理
- ローカルLLM 常時推論
- 社内・個人用 RAG(知識検索)
- 自律型 AIエージェント
- コーディング補完 AI
- 長文・大量資料の解析サービス
という構成です。
LLMのためにRTX側のVRAMを占有しないため、制作とAIを同時に走らせやすくなります。
「一台のPCにすべての計算資源を積む」のではなく、必要な計算資源を役割ごとに配置するという考え方です。
結論:メモリ容量ではなく「何を動かしたいか」から選ぶ
大容量ユニファイドメモリは、RTXのVRAMをそのまま大容量化したものではありません。
- RTXには、高速なGPU演算と成熟したCUDAという強みがあります。
- Ryzen AI Maxには、Windows/Linux環境で大容量共有メモリを使える強みがあります。
- Apple Siliconには、macOSと大容量ユニファイドメモリを一体化した独自の環境があります。
そのため、
「128GBだから強い」ではなく、
「自分が動かしたい処理には、どんなメモリと実行環境が必要なのか」
から考えることが重要です。
GMKtec EVO-X2 / X3
Ryzen AI Max+ 395をまず試すならEVO-X2。OCuLink拡張や大容量SSDを重視するならEVO-X3が有力です。
MINISFORUM MS-S1 MAX
10GbE×2とPCIeスロットを搭載。別PCからの常時AIサーバー運用や、本格的なAI開発機の有力候補です。
HP Z2 Mini / Mac Studio
ISV認証・翌営業日オンサイト保守ならHP。macOS・MLX・クリエイティブ制作兼用ならMac Studioです。
よくある質問
128GBユニファイドメモリは128GB VRAMと同じですか? +
同じではありません。CPU、GPU、OS、アプリなどが共有するメモリです。Ryzen AI Max+ 395の128GB構成では、AMD Variable Graphics Memoryによって最大96GB規模をグラフィックス用途として設定できますが、128GBすべてがGPU専用VRAMになるわけではありません。
Ryzen AI Max+ 395はRTX 5090より高速ですか? +
単純比較はできません。RTX 5090は高速な専用VRAMとCUDA環境を持ち、GPU演算性能を重視する用途に強みがあります。Ryzen AI Max+ 395は大容量共有メモリを利用できることが特徴です。
128GBは必要ですか? +
利用するモデルによります。小〜中規模モデル中心なら64GBでも足りる場合があります。大規模モデル、長いコンテキスト、複数サービスの同時実行などを考えるなら128GBの余裕が活きます。
メモリは後から増設できますか? +
今回紹介するRyzen AI Max系のLPDDR5Xメモリは基本的にオンボードです。購入後の増設を前提にせず、購入時に必要容量を選ぶことが重要です。
RTX PCを持っていても買う意味がありますか? +
あります。RTX側を3DCG・映像・CUDAなど高速GPU処理へ使い、大容量ユニファイドメモリPCをLLMやRAG、AIエージェント用として分業する方法があります。
参考資料・公式確認先
※仕様、価格、構成、在庫状況は変更される場合があります。購入・検討前に各社公式サイトおよび販売ページで最新情報をご確認ください。
※本記事は2026年9月30日時点で確認できる公式発表および公開仕様情報をもとに作成しています。
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