Ryzen AI Max+ 395を搭載したPCを選ぶとき、最も迷いやすいのが64GBと128GBのどちらにするかです。
ローカルLLM用だから、とりあえず128GB。
そこまで大きなモデルは使わないから、64GB。
どちらも一見すると合理的ですが、実際にはメモリ容量だけでは判断できません。
考えるべきなのは、
- 動かしたいモデルのサイズ
- 量子化
- コンテキスト長
- 同時に動かすAI
- OSやアプリが使うメモリ
- 数年後まで同じPCを使うか
です。
さらにRyzen AI Maxでは、システムメモリの一部をGPU側へ割り当てるAMD Variable Graphics Memory(VGM)があります。
64GB構成では最大48GB、128GB構成では最大96GBをグラフィックス用途へ設定できます。
つまり64GBと128GBの違いは、「64GB多い」だけではありません。
GPU側へ大きくメモリを割り当てたあとに、CPU・OS・アプリ側へどれだけ余裕を残せるかも変わります。
この記事では、ローカルLLMを中心に、どこまでなら64GBで十分なのか、どこから128GBへ上げる意味が生まれるのかを整理します。
30秒で分かる:64GBと128GB、どちらを選ぶ?
先に結論です。
| 使い方 | 64GB | 128GB |
|---|---|---|
| 7B〜14Bクラス中心 | ◎ | ○ |
| 20B〜32Bクラスを4-bit中心で使う | ◎ | ◎ |
| 70B級など大規模モデルも試したい | △ | ◎ |
| 長いコンテキストを多用する | ○ | ◎ |
| LLM+RAG+Embeddingなどを同時運用 | △ | ◎ |
| AIエージェントを常時稼働 | ○ | ◎ |
| 価格を抑えたい | ◎ | △ |
| 数年先までモデル大型化に備えたい | ○ | ◎ |
64GB 32Bクラスまでを中心に使う
- 最大48GB VGM(グラフィックス割当)
- 単一LLM中心の利用
- 価格を抑えやすい
- 7B〜32Bクラスが中心
32Bクラスまでを中心に、一つのローカルLLMを使うなら64GBは十分現実的。
128GB 大規模モデル・複数AIまで広げる
- 最大96GB VGM(グラフィックス割当)
- 70B級以上も視野に入る
- 長文RAG・大容量コンテキスト
- AI Agent・複数サービス常駐
70B級以上、大きなコンテキスト、複数AIの同時稼働まで考えるなら128GBの余裕が効く。
ただし、128GBだから小さなモデルが2倍速くなるわけではありません。容量と速度は別です。
まず知っておきたい:64GBと128GBではVGMも違う
Ryzen AI Max+ 395は、CPUとRadeon 8060S GPUが大容量LPDDR5Xメモリを利用する構成です。
AMD Variable Graphics Memory(VGM)では、システムメモリの一部をGPU用途へ固定的に割り当てることができます。
AMD公式が示す最大設定は、
| システムメモリ | 最大VGM設定 | 主な位置づけ |
|---|---|---|
| 64GB | 48GB | 単一LLM中心のローカルAI用途 |
| 128GB | 96GB | 70B級以上や大きな4-bitモデルも視野 |
ここが重要です。
64GB機で48GBをVGMとして確保すると、CPU・OS側に使えるメモリの余裕は小さくなります。
一方、128GB機で96GBをVGMへ設定した場合でも、システム側により大きな余地を残せます。
※VGM設定はシステムRAMの一部をグラフィックス用途へ割り当てるため、CPU側から利用できるメモリ量も変化します。
つまり128GBの価値は、
「大きなモデルをGPU側へ割り当てられること」だけではありません。
「AIへ大きくメモリを渡しても、PC全体の余白を確保しやすいこと」にもあります。
ローカルLLMは「モデル重み」だけでは動かない
ローカルLLMの必要メモリを考えるとき、「70Bモデルだから何GB必要」だけでは判断できません。
実際に必要になるメモリは、概念的には、
です。
そのため同じモデルでも、
- 4-bitか8-bitか
- コンテキストが8Kか128Kか
- 1人で使うか複数セッションを動かすか
- EmbeddingやRerankerも同時に使うか
によって必要量が変わります。
詳細なVRAM計算や基礎知識は、「RAM・VRAMとCPUオフロードの違い」でも解説しています。
「4-bitならパラメータ数÷2GB」は、あくまで出発点
4-bitでは、1パラメータを理論上約0.5byteで表現します。
そのためモデル重みだけを極端に単純化すると、
| モデル規模 | 4-bit重みの理論的な目安 | 代表例 |
|---|---|---|
| 7B | 約3.5GB | Mistral 7B, Llama 3 8B |
| 14B | 約7GB | Qwen 2.5 14B |
| 32B | 約16GB | Qwen 2.5 32B |
| 70B | 約35GB | Llama 3.1 70B, Qwen 2.5 72B |
| 120B | 約60GB | OpenAI GPT-OSS 120B等 |
量子化方式、モデル構造、KV Cache、ランタイム、コンテキスト、OS使用量などが加わります。
実際のGGUFファイルサイズも、この単純計算と完全には一致しません。
したがって、
モデル重みが入る = 快適に運用できる、ではありません。
パラメータ数だけでも判断できない
さらに最近のモデルでは、パラメータ数そのものも単純なメモリ指標ではなくなっています。
たとえばMixture of Experts(MoE)型のモデルでは、総パラメータ数、実際に使われるActive Parameters、保存される量子化形式が異なります。
AMDが公開しているOpenAI GPT-OSS 120Bの例では、MXFP4形式の重みは約61GBとされています。
つまり、
- 「120Bだから120GB必要」ではありません。
- 逆に、「70Bだから35GBあれば必ず動く」でもありません。
CORE SPECでは、モデルサイズを見るとき、次の順で確認することを推奨します。
各パラメータ別の必要VRAM一覧表は、「7B・14B・32B・70Bなどモデルサイズ別の必要メモリを詳しく見る」でも詳細にまとめています。
モデル規模別の判断:どこまで64GBで、どこから128GBか
7B〜14B中心なら、128GBは必要ない
7B〜14Bクラスを中心に使う場合、容量だけを理由に128GBを選ぶ必要性は高くありません。
- 日常的なローカルチャット
- 軽量なコーディング支援
- 個人用RAG
- オフラインAI
- 小規模な文書解析
こうした用途では64GBでもかなり余裕があります。
むしろ判断すべきなのは、価格、SSD容量、冷却、ネットワーク、PC本体の使い方です。
小さなモデルを使うだけなら、128GBへ増やしてもモデル自体が速くなるわけではありません。
20B〜32Bクラスなら64GBが一つの基準
64GB構成が最も合理的になりやすいのが、この領域です。
AMD自身も、64GBのRyzen AI Max+シリーズを大きめのローカルAIモデルへ使う構成として案内しています。
4-bit量子化した20B〜32Bクラスを、LM Studio、llama.cpp、ローカルAIアプリ、コーディングAIなどで単体利用するのであれば、64GBは十分有力です。
したがって、「ローカルLLMをやるなら最初から128GB」とは限りません。
最大でも32B前後までしか使わないことが明確なら、64GBを選び、価格差をSSDや別の制作環境へ回す考え方もあります。
ただし32Bでも128GBが意味を持つ場合がある
モデルサイズが32B以下だからといって、必ず64GBでよいわけでもありません。
たとえば、非常に長いコンテキストを使う、複数セッションを同時に処理する、LLMとEmbeddingモデルを同時に常駐させる、Rerankerも使う、AIエージェントを複数動かす、他のアプリも同じPCで使う場合です。
こうなると必要なのは、「一つのモデルをロードできる最低容量」ではなく、「AI環境全体を余裕を持って動かせる容量」になります。ここから128GBの価値が大きくなります。
70B級を使いたいなら128GBを優先したい
70B級になると判断は変わります。
4-bit化によってモデル重みそのものは大幅に小さくできます。
しかし、KV Cache、ランタイム、コンテキスト、OS、その他AIサービスまで含めると、64GBの余裕は急速に小さくなります。
特にRyzen AI Maxの64GB構成では、VGMの最大設定が48GBです。
したがって70B級を、「ロードできる可能性があるか」ではなく、「実用環境として余裕を持って使えるか」で判断するなら、128GBを優先したい領域です。
CORE SPECでは、70B級以上を購入理由の一つにしているなら、128GBから考えることを推奨します。
これは、「64GBでは70Bが絶対に動かない」という意味ではありません。モデル、量子化、ランタイム、コンテキスト条件によっては動作する場合があります。しかしPC購入時の判断としては、動く最小構成ではなく、使い続けられる余白を見る方が合理的です。
100B級以上は128GBを活かせる領域
100B級以上をローカルで試したいなら、128GBの価値はさらに明確になります。
AMDは128GBのRyzen AI Max+ 395について、96GB VGMを利用して4-bitの非常に大きなモデルを扱う例を公開しています。
ただしここでも、128GBならどんな100Bモデルでも動くわけではありません。
モデル構造や量子化方式によって必要量は大きく異なります。GPT-OSS 120Bのように、MXFP4重みが約61GBというモデルもあります。
この領域では、パラメータ数ではなく、実際に使うモデルファイルとランタイムの必要量を確認する必要があります。
7B〜14Bクラスを中心に使うなら、容量面では64GBでも余裕を取りやすい。
20B〜32Bクラスを4-bitで単体利用するなら、64GBが有力な選択肢になる。
長文コンテキストやRAG・Embedding常駐を狙うなら、32Bでも128GBの余裕が活きる。
96GB VGMを活かして実用的に運用するなら、最初から128GBを優先するのが安全。
モデルサイズ以外で128GBが必要になる条件
長いコンテキストを使うなら、モデルサイズだけを見ない
もう一つ128GBを検討する理由になるのがコンテキスト長です。
長文資料、コードベース、複数文書、会話履歴などを大量に与えると、KV Cacheが増えていきます。
- 大量のPDFを使うRAG
- 大規模コードベース
- 長時間動くAIエージェント
- 非常に長い会話履歴
- 複数ユーザーからの同時利用
では、モデル本体以外のメモリが無視できなくなります。
そのため、「モデルは32Bだから64GBで十分」ではなく、「32Bをどのように使うのか」まで考える必要があります。
RAG・AIエージェントでは「複数モデル常駐」を考える
AI環境が高度になると、LLMだけを動かすとは限りません。
たとえばRAGなら、
AIエージェントでは、
のような環境になることもあります。
この場合、1モデルの最大サイズより、「合計でどれだけの計算資源を常駐させるか」が重要です。
1つのAIと対話するPCなら64GB。
複数のAIを常駐させる「AIサーバー」に近づくほど128GB。
この考え方が分かりやすい境界です。
64GBを選ぶ人/128GBを選ぶ人
64GBを選ぶ人
- 7B〜32Bクラスが中心
- 4-bit量子化を中心に使う
- 同時に動かすLLMは基本1つ
- ローカルチャットやコーディング支援が中心
- 巨大なコンテキストは常用しない
- 価格差を抑えたい
- SSDや別のPCへ予算を回したい
特に、「何となく将来不安だから128GB」だけなら、一度立ち止まってよいと思います。必要以上の容量を積むことも、計算資源の最適化ではありません。
128GBを選ぶ人
- 70B級以上もローカルで試したい
- 長いコンテキストを使う
- RAGを本格運用する
- LLM+Embedding+Rerankerを同時常駐させる
- AIエージェントを常時動かす
- 別PCからAIサーバーとして利用する
- 数年間メモリ容量で悩みたくない
- 将来モデルが大型化しても対応範囲を広く残したい
特に重要なのは最後です。Ryzen AI Max搭載ミニPCのLPDDR5Xメモリは基本的にオンボードです。購入後に64GBから128GBへ増設する前提では選べません。
128GBにすると推論速度も上がる?
基本的には、「容量が2倍だから、推論速度も2倍」とは考えません。
同じRyzen AI Max+ 395を使うのであれば、64GBと128GBの主な差はメモリ容量です。
128GBの最大の価値は、「より大きなモデルや、より大きな実行環境をメモリ内へ収められること」です。
ただし64GBではモデルの一部をCPU側へ逃がす必要があり、128GBならGPU側へより多く収められる、といった条件では実効速度に差が出る可能性があります。
つまり、「128GBだから速い」のではなく、「128GBだから、低速なオフロードを避けられる場面が増える」と考える方が正確です。
価格差を見るときは「GB単価」で考えない
128GBは64GBの2倍です。
だからといって、「メモリが2倍だから価格も○万円までなら得」と考える必要はありません。
見るべきなのは、「その追加64GBによって、自分が新しく何をできるようになるか」です。
64GB / 128GB 判断フロー
迷ったら、次の順番で考えてください。
CORE SPECの判断
64GBと128GBの境界は、「ローカルLLMをするかどうか」ではありません。
本当の境界は、
一つのAIを使うPCなのか。
AI環境そのものを常駐させるPCなのか。
だと思います。
7B〜32Bクラスのモデルを一つ使うなら、64GBはかなり実用的です。
一方、大きなモデル、長いコンテキスト、RAG、複数AI、エージェント、常時稼働へ進むほど、128GBは単なる余裕ではなく、「できることの範囲を広げる容量」になっていきます。
容量の目安がついたら、次はI/O、SSDスロット、10GbE、OCuLink、価格を含めて機種を選びます。
結論:64GBは「妥協」、128GBは「正解」ではない
64GBは小容量モデル向けの妥協構成ではありません。
7B〜32Bクラスを中心に使うなら、十分に合理的な選択です。
一方、128GBは数字を大きくするためのスペックでもありません。
価値が出るのは、64GBでは「入るかどうか」を気にし始める用途を、余裕を持って扱いたいときです。
最終的には、今使っている最大モデルではなく、「このPCで、どこまでAI環境を広げたいか」から決めるのがよいと思います。
- 1台のPCで1つのLLMを使うなら64GB。
- AIを常駐させ、組み合わせ、育てていくなら128GB。
容量は、大きければよいのではありません。
自分が作りたいAI環境に必要な余白を選ぶ。それがRyzen AI Max+ 395の64GBと128GBを選ぶ基準です。
※128GBを選ぶ理由が「大容量モデル」にある場合、RTX 5090 32GBとの違いは「128GBユニファイドメモリPCとRTX 5090 32GBはどちらがAI向け?」で整理しています。
※70B級以上を含む、より大きなモデルやmacOS環境との比較を検討している場合は、「Mac Studio M5 UltraとRyzen AI Max+ 395はどちらがローカルAI向け?」でメモリ・帯域・MLX・ROCmを比較しています。
※128GBミニPCの実機としてEVO-X2とEVO-X3で迷っている場合は、「GMKtec EVO-X2とEVO-X3はどちらを選ぶ?」でOCuLinkや端子・価格差を比較しています。
よくある質問
Ryzen AI Max+ 395は64GBでもローカルLLMに使えますか? +
70Bモデルには必ず128GBが必要ですか? +
128GBにすると64GBより推論速度が速くなりますか? +
64GB構成ではGPUに何GB割り当てられますか? +
あとから64GBから128GBへ増設できますか? +
🧭 大容量AIメモリ選びの道標
容量、GPU演算、プラットフォーム、実機、配置。
今の迷いに合わせて、必要な判断へ移動できます。
VRAM・RAMとの違いと、大容量共有メモリがローカルAIで注目される理由を理解する。
モデルサイズ、コンテキスト、RAG・Agent運用から必要なメモリ容量を判断する。
モデルを収める容量と、高速に計算するGPU性能の違いから判断する。
MLX / macOSか、ROCm・Windows / Linuxか。実行環境とメモリ構成から選ぶ。
完成したAIノードか、OCuLinkで外へ拡張できるAIノードかを判断する。
1台へ集中するか、CUDA制作と大容量AIを別ノードへ役割分担するかを設計する。
