生成AIやAIコーディングエージェントを日常の業務・開発に取り入れるとき、多くの人が一度は立ち止まる疑問があります。「いま入力した企画書やソースコード、社内のデータベース構造は、一体どこのサーバーへ送られ、誰にどこまで利用されるのか?」という問題です。
とくに近年は、ターミナル上で直接ファイルを読み書きするオープンソースのAIエージェント「OpenCode」や、高い推論性能とオープンウェイト公開で注目を集める「DeepSeek」など、ツールの種類と提供経路が急速に多様化しました。その結果、「OpenCodeは安全なのか」「DeepSeekは危険なのか」「有料プランやローカルLLMなら絶対に漏洩しないのか」といった議論が、それぞれのレイヤーを混同したまま語られがちです。
本記事では、2026年10月18日時点で確認できる各社の公式プライバシーポリシー・利用規約・技術ドキュメントに基づき、「AIに預けたデータの行方」を自分で切り分けて判断するための構造を解説します。
- 結論:AIのデータ安全性は「モデル名」ではなく「5つの境界線」で決まる
- AIに渡したデータはどこへ行くのか?5つのデータ処理レイヤー
- OpenCodeとOpenCode Zenの安全性──エージェント権限・共有・API接続先
- DeepSeekの安全性と情報漏洩リスク──3つの利用経路でまったく異なる境界
- ChatGPT・Claude・Gemini・DeepSeek|契約形態別の学習利用・保存期間比較
- 「ローカルLLMなら100%安全」ではない理由──見落とされがちな5つの盲点
- 高性能PC購入だけが答えではない──機密データを守る4つの現実的対策
- 公式一次情報・規約確認先一覧(2026年10月18日確認)
1. 結論:AIのデータ安全性は「モデル名」ではなく「5つの境界線」で決まる
最初に結論を整理します。AI利用における情報漏洩リスクや学習利用の有無は、「DeepSeekだから危険」「ClaudeやChatGPTだから安心」「ローカルLLMだから100%安全」といったツール名・モデル名単位のレッテルでは決まりません。
同じモデル、同じエージェントを使っていても、以下の5つの境界線がどう設定されているかによって、データの行き先と法的・技術的な保護水準はまったく別のものになります。
エージェント層とモデル層の分離
OpenCodeのような「手元で動くエージェント(ハーネス)」と、推論を行う「LLMプロバイダー」は別物です。誰がファイルを開き、どこのAPIエンドポイントへ送信しているかを分けて確認する必要があります。
提供経路とデータ保管法域(Jurisdiction)
同じDeepSeekモデルでも、「中国本社の公式Web/API」「米欧日クラウドの第三者API」「手元PCでのローカル実行」では、データが通過・保存されるサーバーと適用法域が根本から異なります。
個人契約(Consumer)と商用・API契約の差
個人向けの無料・有料プラン(Plus / Pro / Max等)は初期設定やユーザーの選択・Privacy設定の状態によって学習利用の対象となる一方、Team / Enterpriseや商用APIは「既定で学習利用OFF」と規約が明確に分かれています。
「非学習」と「Zero Data Retention(ZDR)」の差
「学習に使われない」ことと「サーバーに保存されない」ことは同義ではありません。標準APIでは不正監視用に最大30日間ログが保持され、ZDRを適用した場合でもステートフル機能や課金メタデータ等は保持対象として残ります。
BOUNDARY 05 ── ローカル実行と外部ツール通信の境界:ローカルLLMで推論自体をPC内に閉じ込めても、エージェントがWeb検索やRemote MCP、セッション共有機能(/share)を使えばデータは外部へ出ます。「どこで推論するか」と「ツールがどこへ通信するか」の両方を見る視点が不可欠です。
2. AIに渡したデータはどこへ行くのか?5つのデータ処理レイヤー
「AIにプロンプトを入力して返答を得る」という一見シンプルな動作の裏側では、データは複数の段階(レイヤー)を通過しています。情報漏洩や意図しない外部利用が起きるポイントを特定するには、次の5段階を切り分けて追跡する必要があります。
エージェントがローカルファイル、.env、Git履歴、クリップボード、ターミナル出力を読み取る段階。
OpenCode ZenやOpenRouter、社内プロキシ、リモートMCPサーバーなど中継地点を通過する段階。
クラウドGPUまたはローカルGPUのVRAM/ユニファイドメモリ上で、トークン処理が行われる段階。
チャット履歴の保存や、不正利用監視(Abuse Monitoring)目的で30日間等のサーバー保管が行われる段階。
将来のモデル訓練パイプラインへの組み込みや、人間のレビュアーによる品質評価・アノテーション段階。
※「学習に使われない(Layer 5の遮断)」だけでは、Layer 1の過剰なファイル読み取りやLayer 4のサーバー保存・法域リスクは消えません。
「学習に使われない」と「Zero Data Retention(ZDR)」の違い・例外条件
多くの利用者が混同しやすいのが、Layer 4(ログ保存・不正監視)とLayer 5(モデル学習への二次利用)の違い、そしてZero Data Retention(ZDR:ゼロデータ保持)の正確な適用範囲です。
たとえばOpenAIやAnthropicの商用APIを利用した場合、規約上「顧客データをモデルの学習(Layer 5)には使用しない」と明記されています。しかし、不正利用の検知や安全性ポリシー執行(Abuse Monitoring)のため、標準設定では入出力ログが最大30日間サーバー上に保持(Layer 4)されます。
この「30日間の監視ログ保持」を行わず、対象エンドポイントでの推論完了・レスポンス返却後にプロンプトと出力をディスクへ永続化しない構成・特約がZero Data Retention(ZDR)です。ただし、ZDRは「あらゆるデータが無条件で即座に消滅する魔法の仕組み」ではありません。公式仕様上、以下の適用対象・例外・保存対象を区別して理解する必要があります(出典:OpenAI API Docs - Your data / Anthropic Privacy Center / Zero data retention in the Gemini Developer API)。
- ZDRの適用対象(ステートレス推論エンドポイント):事前申請・審査を通過した組織やEnterprise契約、またはZDR対応プロバイダーにおいて、
Chat Completionsやステートレス構成のResponses API/Messages API等の対象エンドポイントで送受信されるプロンプトおよび生成結果(Customer Content)の30日間監視ログ保持を除外します。 - 例外① ステートフル機能・Grounding・非対象エンドポイントの保存:機能自体がサーバー側での状態保持を前提とするAPI(例:会話状態をサーバー保持する
Assistants / Threads、Files / Vector Stores、Batch API、Fine-tuning、Gemini Developer APIにおいて既定で会話状態を保存するInteractions API[非保存にはstore: falseの明示が必要]やFile API、およびプロンプト・文脈・出力を30日間保持するGrounding with Google Search / Maps等)は、ユーザーが明示的に削除するか所定の保持期間が満了するまでデータが保存されます(またはZDR契約下では一部機能が制限されます)。 - 例外② Anthropic「Covered Models」の保持例外と移行措置(2026年6月9日適用開始):Anthropicでは2026年6月9日より、高度なフロンティアリスク管理の対象として指定された一部の最上位モデル「Covered Models」(2026年10月時点では
Claude Mythos 5/5.1およびClaude Fable 5/5.1が該当)について、安全監視と事後調査のため提供プラットフォーム(Claudeアプリ、Claude API / Console、Claude Enterprise、Amazon Bedrock、Google Cloud、Microsoft Foundry等)を問わず原則としてプロンプトと出力が最低30日間保持され、標準のZero Data Retention(ZDR)が適用されない規定が導入されました。なお、Anthropicは顧客管理クラウド内に監視データを保持できる Enterprise Frontier Safeguards(EFS) を導入するとともに、適格な組織(eligible organizations)に限り、Claude Fable 5/5.1について社内業務アプリケーション(internal business applications)用途で期間限定にてZDR利用を認める移行措置も設けています。したがって、すべての利用者が無条件に30日保持となるわけではなく、契約と適用条件の確認が必要です。また、このCovered Modelsの規定はすべてのClaudeモデルに適用されるわけではなく、指定モデル以外の通常モデル(Claude Sonnet / Opus / Haiku等の非指定モデル)には従来通り既存の契約およびZDR設定が適用されます(出典:Claude Help Center - Covered Models / Data retention practices for Covered Models)。 - 例外③ アカウント・課金・運用メタデータの保持:ZDRが有効であっても、APIキーや組織ID、リクエスト日時、利用モデル名、入出力トークン数、レイテンシ、レート制限や請求(Billing)に必要な運用・課金メタデータは保持対象となります。
- 例外④ 法令上の保存義務・安全性違反および外部ツール:裁判所命令や法令に基づく保存義務が生じた場合や、ユーザーが明示的に有効化した外部Web検索・サードパーティ製プラグイン/リモートMCPへ送信されたデータは、それぞれの規約・法規に従います。
3. OpenCodeとOpenCode Zenの安全性──エージェント権限・共有・API接続先
ターミナル(CLI/TUI)やデスクトップ環境で動作するオープンソースのAIコーディングエージェント「OpenCode」について、安全性を検証する際は、①OpenCode本体(ローカルで動くエージェントハーネス)と、②OpenCode Zen(OpenCode Console / Goとして提供される公式モデルゲートウェイ)、そして③接続先の外部LLMプロバイダーの3つを明確に分けて捉える必要があります。
3-1. OpenCode本体は「モデル」ではなく「手元のエージェントハーネス」
OpenCode自体はオープンソースで公開されているクライアント実行環境(ハーネス)であり、独自の巨大言語モデルを単体で強制するサービスではありません。ユーザーが自身のAPIキー(Anthropic、OpenAI、Google Gemini等)やローカルLLM(Ollama、LM Studio、llama.cpp等)を設定した場合、プロンプトや読み取ったファイル内容は、ユーザーのPCから設定先のAPIエンドポイント(またはlocalhost)へ直接送信されます。
したがって、「OpenCodeを使ったからOpenCode運営サーバーへ全コードが抜かれる」という構造ではありません。しかし、AIエージェントはチャットボットとは異なり「手元のファイルシステムを読み、シェルコマンドを実行する権限」を持つため、以下の公式仕様を正しく理解して設定する必要があります(出典:OpenCode Docs - Permissions)。
3-2. 既定のファイル読み取り権限と「.env」保護の仕組み・注意点
OpenCodeの公式ドキュメント(Permissions)では、ツールの実行制御は設定ファイル(opencode.json)の permission ブロックにおいて、"allow"(自動許可)、"ask"(毎回ユーザーへ確認)、"deny"(完全拒否)の3段階で管理されます。
- 通常のファイル読み取りと
.env制限:既定ではプロジェクト内のファイル読み取り(read)は許可されていますが、APIキーやシークレットが含まれやすい*.envおよび*.env.*ファイルは、デフォルトで読み取り拒否(deny)される保護ルールが組み込まれています(サンプル用の*.env.example等は許可)。 - 見落としやすい注意点(プロセス環境変数とシェル実行):
readツールで.envの直接読み取りが拒否されていても、OpenCodeプロセス起動時にカレントディレクトリの.envが環境変数としてロードされる挙動や、bashツール(シェルコマンド実行)を無制限に許可した場合にコマンド経由で環境変数・機密ファイルへアクセスされる経路には注意が必要です。 - 推奨される権限設定:機密性の高いリポジトリでは、
opencode.jsonでedit(ファイル編集)、bash(コマンド実行)、webfetch(外部URL取得)の権限を明示的に定義し、rm *や認証情報ディレクトリへのアクセスを"deny"または"ask"に制限することが有効です。
{
"$schema": "https://opencode.ai/config.json",
"share": "disabled",
"permission": {
"read": {
"*": "allow",
"*.env": "deny",
"*.env.*": "deny",
"*.env.example": "allow"
},
"edit": "ask",
"bash": {
"*": "ask",
"git status*": "allow",
"git diff*": "allow",
"rm *": "deny"
},
"webfetch": "ask"
}
}
※安全設定の有効範囲と限界に関する補足:上記の "*.env": "deny"(read ツールによる .env 読み取り拒否)、"share": "disabled"(セッション共有の無効化)、"bash": "ask"(シェルコマンド実行の承認制)は、あくまでOpenCode内の個別ツールの権限や共有機能を制限するものであり、すべてのデータ流出経路を完全に遮断する保証ではありません。たとえば、ユーザーが承認したスクリプトやビルドコマンドが内部で環境変数や機密ファイルを読み取って標準出力へ出力した場合、外部から読み込んだコンテンツによる間接的プロンプトインジェクション、あるいは接続しているAPIや外部MCPサーバー側でのデータ保持などはこれだけでは防げないため、第6章・第7章で解説するSandbox隔離や契約統制と必ず組み合わせて運用してください。
3-3. セッション共有機能(/share)の仕組みと無効化設定
OpenCodeには、デバッグやチーム内での相談のために現在の会話セッションをWebリンクとして共有する機能(/share コマンド)が搭載されています(出典:OpenCode Docs - Config (Share))。
既定値は "manual"(手動実行のみ)であり、ユーザーが明示的に /share を実行しない限り自動で会話が公開されることはありません。ただし、一度 /share を実行すると、そのセッション内のプロンプトや読み込まれたコード断片がOpenCodeの共有サーバー(opncd.ai / opencode.ai/s/<share-id>)へアップロードされ、URLを知っている誰でも閲覧できる状態になります(/unshare で削除可能)。
業務コードやNDA対象プロジェクトを扱う環境では、誤操作によるアップロードをシステム側で防ぐため、上記の設定例のように opencode.json に "share": "disabled" を記述して共有機能自体を無効化しておくのが確実です。
3-4. OpenCode Zen(Console / Go)のモデル別データ保持期間・学習利用・提供元
個別に各社のAPIキーを契約・管理する手間を省くため、OpenCodeチームが公式に提供している推論ゲートウェイが「OpenCode Zen」(現在の公式ドキュメントでは従量課金の OpenCode Console / Models および定額サブスクリプションの OpenCode Go として展開)です(出典:OpenCode Docs - Zen / Models / OpenCode Go - Privacy)。
ここで注意すべきなのは、OpenCode Zen / Goにおけるデータ取り扱いは「有料モデル=無条件でZDR、無料モデル=すべて学習対象」という単純な二元論ではないという点です。公式ドキュメント上、すべてのモデルは米国および欧州(US / EU)でホスティングされていますが、データ保持期間・モデル学習の有無・上流提供元(プロバイダー)はモデルごとに個別に規定されています(以下は2026年10月18日時点の公式ドキュメント確認情報です)。
- ① 0日保持(ZDR)・学習利用なしのモデル(有料主力モデル+一部の期間限定無料モデル):多くのホスティング対象モデル(例:月次更新のZDR契約下でホストされる
DeepSeek V4.1 Flash/DeepSeek V4 Proや、期間限定無料のGLM-5.3-Flash Free、DeepSeek V4.1 Flash Free、Space Bunny Free、LongCat 2.5 Preview Free等)は、データ保持0日(Zero Data Retention)かつモデル学習への利用なしと明記されています。 - ② 30日保持・学習利用なしのモデル(OpenAI / Anthropic API等・一部のGo / 無料モデル):有料モデルであってもすべてが0日保持ではありません。OpenCode経由で利用する OpenAI APIs および Anthropic APIs、ならびにOpenCode Goの
Grok 4.7、GPT 6 Luna、GPT 5.6 Luna、Claude Haiku 5.5、さらに無料枠のBeam Free等は、モデル学習には利用されませんが、上流プロバイダーの安全性・監視ポリシーに基づき最大30日間データが保持されます(Mistral APIsも学習利用なし・Mistralのデータ保持ポリシーに準拠)。 - ③ 有料・サブスク枠でも「学習利用あり(Not ZDR)」となるContributorモデル:OpenCode Goで提供されている
Gemini 4 Argon Contributor、Muse Spark 1.3 Contributor、Muse Spark 1.2 Contributorのように、名称にContributorが付くモデルは、割引料金や利用枠拡大の対価としてプロンプトと出力がモデル学習に利用され、ZDR対象外(Model training: Yes / Data retention: Not ZDR)であることが公式表に明記されています。 - ④ 学習・製品改善に利用される無料・トライアルモデル:評価・トライアル目的で提供されている
Big Pickle、Exo Free、MiMo-V2.6-Flash Free、MiMo-V2.5 Free、LL Alpha Free(30日保持・学習利用あり)、およびNVIDIAの無料トライアルエンドポイントであるNemotron 3 Ultra Free/Nemotron 3.5 Lightning Free/Nemotron 3.5 Super VL Free(セキュリティおよびNVIDIA製品・サービス改善のためログ記録、トライアル用途限定)では、入力データがモデル改善・学習に利用される規定となっています。
| OpenCode利用区分・モデル群 | 提供元・ホスティング | データ保持期間・学習利用(2026年10月18日時点確認) | 機密コード適性 |
|---|---|---|---|
| 自前の商用APIキー直接接続 (OpenAI / Anthropic / Vertex AI等) |
各APIプロバイダーへ直接送信 | 各社の商用API規約に準拠(既定で学習利用なし。標準で最大30日監視保持、または個別のZDR特約) | ◎ 適する(自社契約の統制下) |
| OpenCode Zen / Go(ZDR対象モデル) (DeepSeek V4 Pro / V4.1 Flash、GLM-5.3-Flash Free等) |
US / EUホスティング(ZDR契約プロバイダー) | 保持期間:0日(ZDR) / 学習利用:なし ※一部の期間限定Freeモデルも0日保持・非学習に該当 |
○ 適する(モデル別ZDR表記の確認が前提) |
| OpenCode Zen / Go(30日保持・非学習モデル) (OpenAI / Anthropic API、Grok 4.7、GPT 6 Luna、Claude Haiku 5.5、Beam Free等) |
US / EU(OpenAI・Anthropic・xAI等の各上流API) | 保持期間:最大30日 / 学習利用:なし ※不正監視・安全性確認のため30日間保持(Mistralは同社保持規定に準拠) |
○ 適する(30日保持がNDA上許容される場合) |
| OpenCode Go(Contributor枠モデル) (Gemini 4 Argon Contributor、Muse Spark 1.3 / 1.2 Contributor) |
US / EU経由で各モデル提供元へ送信 | 保持期間:Not ZDR / 学習利用:あり(Yes) ※有料サブスク内でもContributor枠は入出力がモデル学習に利用される |
✕ 非推奨(機密・非公開コード投入不可) |
| OpenCode Zen(学習・改善ありの無料/Trial枠) (Big Pickle、Exo Free、MiMo Free、LL Alpha Free、Nemotron Free等) |
US / EU経由で評価提供元(NVIDIA等含む)へ送信 | 保持期間:30日または提供元規定 / 学習・製品改善利用:あり ※プロンプト収集・製品改善への利用が明記(トライアル用途限定) |
✕ 非推奨(公開コード・検証用途に限定) |
| ローカルLLM接続 (Ollama / LM Studio / llama.cpp等) |
localhost(手元PC内で完結) |
外部保持なし / 学習利用なし ※ただし /share や webfetch・外部MCP利用時を除く |
◎ 適する(最高水準の局所性) |
※情報確認時点(2026年10月18日)と利用時の公式Privacy表の再確認について:上記のモデル別データ保持表および分類は、2026年10月18日時点の公式ドキュメント確認情報です。OpenCode Zen / Goでは新規モデルの追加・トライアル枠の提供終了が随時行われるほか、一部のホスティングモデルにおけるZero Data Retention(ZDR)契約は上流プロバイダーとの月次更新契約(monthly renewed ZDR agreement)等に基づいています。モデル構成やZDR契約条件が変更される可能性があるため、実務の非公開コードを扱う際は、必ず利用時点で公式の OpenCode Docs - Zen / Models(Privacy表) および OpenCode Go - Privacy表 を再確認し、対象モデルが「Model training: No」および求める保持期間(0 days / 30 days)になっているかを確かめてください。
4. DeepSeekの安全性と情報漏洩リスク──3つの利用経路でまったく異なる境界
次に、高いコーディング能力や推論能力(DeepSeek-V3 / DeepSeek-R1 / V4系等)で広く使われている「DeepSeek」の安全性を検証します。
ここで最も重要なのは、「DeepSeekという企業・公式サービス(Web/アプリ/公式API)」と「オープンウェイトとして公開されているDeepSeekモデル」を混同しないことです。利用経路と契約条件によって、データが通過する国・サーバー・適用規約は次の3通りに完全分岐します。
4-1. 経路①:DeepSeek公式Web/アプリ(chat.deepseek.com)と公式API(platform.deepseek.com)の適用規約
DeepSeekの公式サービスは、中国・杭州市に拠点を置く Hangzhou DeepSeek Artificial Intelligence Co., Ltd.(杭州深度求索人工智能基礎技術研究有限公司) が運営しており、一般向けWeb・アプリと開発者向け公式APIでは適用される規約文書が分かれています。
- 公式Web・アプリの適用規約(Terms of Use & Privacy Policy):消費者向けのWebチャット(
chat.deepseek.com)およびモバイルアプリには、DeepSeek Terms of Use および DeepSeek Privacy Policy が適用されます。入力したテキスト・プロンプト・アップロードファイル・チャット履歴等は、サービスの提供・運営・安全性確保およびモデル学習・技術改善に利用される規定です。 - 学習利用に対するオプトアウト権の明記:公式規約では学習利用に対するオプトアウト権が定められています。具体的には、
DeepSeek Terms of Use第4.3条において設定画面のImprove the model for everyoneトグルをオフにすることでモデル改善利用からオプトアウトできる旨が記載されており、DeepSeek Privacy Policy(「Your Rights」節)でも個人データをモデル学習や技術最適化に使用することからオプトアウトする権利および連絡窓口(privacy@deepseek.com)が明記されています。 - 公式APIの適用規約(Open Platform Terms of Service):開発者向けの公式API(
platform.deepseek.com)には、個別規約として DeepSeek Open Platform Terms of Service が適用されます。同規約(第3.3条・第5.5条)では、開発者自身のアカウント情報はDeepSeek Privacy Policyに従う一方、APIを通じて送信されるエンドユーザーの個人データについては開発者がデータ管理者(Controller)として適法な同意取得等の責任を負い、DeepSeekへ処理を委託する形をとっています。ただし、欧米クラウドAPIのような標準のセルフサーブ型Zero Data Retention(ZDR)保証は公開規約上確認できません。 - データ所在地(中国国内サーバー)と日本の個人情報保護委員会(PPC)の注意喚起:学習利用のオプトアウト有無やWeb/APIの違いにかかわらず、公式サービスで収集されたデータは「中華人民共和国(PRC)国内のサーバーに保存される」と明記されており、準拠法も中国法(
Open Platform Terms第10.1条等)となります。日本の個人情報保護委員会(PPC)からも一次情報として「DeepSeekに関する情報提供」が公表されており、データが中国国内サーバーに保管され中国の法令(個人情報保護法、サイバーセキュリティ法、データセキュリティ法、国家情報法等)の適用を受ける点が注意喚起されています。したがって、個人情報や社外秘データ、顧客の非公開ソースコードをDeepSeek公式Web/アプリや公式APIへ直接入力することは避けるべきです。
4-2. 経路②:第三者ホスティング・推論プロバイダー経由(「独立ホスティング」と「中継ルーティング」の切り分け)
DeepSeekが他のクローズドモデルと大きく異なるのは、モデルの重み(Weights)がMITライセンス等のオープンな条件で公開されている点です。これにより、第三者のクラウド事業者や推論プロバイダー経由でDeepSeekモデルを利用する選択肢が存在しますが、「サードパーティ経由だからDeepSeek社には一切送信されない」と無条件に断定してはいけません。以下の2つの提供形態(データ処理経路)を確認する必要があります。
- ① クラウド事業者・推論基盤による「独立ホスティング」が確認できる場合:AWS(Amazon Bedrock)、Google Cloud(Vertex AI)、Microsoft Azure、あるいは米国・欧州等の自社GPUクラスター上でモデルウェイトを直接ロードして推論を提供する事業者の場合、推論処理はそのクラウド事業者の管理リージョン(米国・欧州・日本等)内で完結します。この独立ホスティング経路であれば、入力プロンプトがHangzhou DeepSeek(中国サーバー)へ送信されることはなく、契約したクラウド事業者の商用規約・データガバナンスが適用されます。
- ② APIアグリゲーター・中継サービス(OpenRouter等)を利用する場合の条件:複数の推論プロバイダーを束ねてルーティングするサービス(OpenRouter等)や、背後のインフラ構成が非公開のサードパーティを使う場合、リクエストの転送先(上流プロバイダー)に「DeepSeek公式API」や「プロンプトログの保存・学習利用を行うプロバイダー」が含まれるケースがあります。
※第三者API・OpenRouter等で機密データを扱うための必須条件:第三者サービス経由でDeepSeekモデルを使う際は、必ず「①モデルが中国外の独立した自社インフラでホストされているか」「②上流へのデータ処理経路がどうなっているか」を確認してください。OpenRouter等を利用する場合は、アカウントのPrivacy設定でデータ収集・学習利用プロバイダーを拒否(Data Collectionの設定)したうえで、Zero Data Retention(ZDR)対象エンドポイントのみにルーティングを強制する設定を有効にする必要があります(出典:OpenRouter Docs - Data Collection / OpenRouter Docs - Zero Data Retention)。
4-3. 経路③:手元のPCでのローカル実行(Ollama / LM Studio / llama.cpp)
3つ目の経路は、Hugging Face等からDeepSeek-R1(QwenやLlamaベースの蒸留モデルを含む)や量子化モデル(GGUF / safetensors等)を手元のPCへダウンロードし、Ollama、LM Studio、llama.cpp、vLLM等のローカルランタイムで動かす方法です。
この構成では、モデルの重みファイルが手元のストレージにあり、推論計算も手元のGPU VRAMやユニファイドメモリ上で実行されます。推論プロセス自体が外部のインターネットへプロンプトを送信することはないため、データ主権(Data Sovereignty)の観点では最も透明性の高い運用が可能です(ただし第6章で解説するローカル環境特有の5つの条件を満たす必要があります)。
| DeepSeekの利用経路・適用規約 | データ送信先・保管法域 | 学習利用・オプトアウト・ZDRの扱い | 推奨される用途範囲 |
|---|---|---|---|
| ①-A DeepSeek公式Web / アプリ (Terms of Use / Privacy Policy) |
Hangzhou DeepSeek(中国国内サーバー保管・中国法域適用) | 既定で学習・改善利用あり。設定(Improve the model for everyone)や privacy@deepseek.com でのオプトアウト権規定あり(※法域・保管先は不変) |
公開情報の調査、一般的な学習、公開可能なサンプル検証のみ(個人情報・機密は不可) |
| ①-B DeepSeek公式API (Open Platform Terms of Service) |
Hangzhou DeepSeek(中国国内サーバー処理・中国法準拠) | エンドユーザーデータは開発者の管理責任下で処理委託。ただし公開規約上の標準セルフサーブZDR保証は未確認 | 非機密データの検証用途に限定(法域統制やZDRが求められる業務データには非推奨) |
| ② 第三者クラウド・推論API (Bedrock / Vertex / OpenRouter ZDR設定等) |
独立ホスティング時:各クラウドの指定リージョン(米・欧・日等、DeepSeek社への送信なし) ※中継型はルーティング制限が必須 |
独立ホスト事業者の商用規約に準拠(非学習保証・ZDR構成が可能。アグリゲーター利用時はZDR強制と非学習フィルタ設定が条件) | 大型モデルの推論性能を、独立ホスティングおよび法域・ZDR統制下で業務利用したい場合 |
| ③ ローカルPC実行 (Ollama / LM Studio / llama.cpp等) |
手元のPC内部のみ(外部サーバーへの推論送信ゼロ) | 学習利用なし・外部保持なし(自身のストレージ・メモリ管理下) | 外部送信が一切許されない機密データ処理、オフライン環境での開発支援 |
5. ChatGPT・Claude・Gemini・DeepSeek|契約形態別の学習利用・保存期間比較
「OpenCodeにどのAPIキーを設定すべきか」「普段の業務でどのWebチャット・APIを使うべきか」を判断できるよう、主要4社(OpenAI、Anthropic、Google、DeepSeek)の個人向けプラン(Consumer)と法人・APIプラン(Commercial / API)の公式データ取扱条件を一覧で比較します(2026年10月18日時点の公式ドキュメントに基づく)。
| サービス / 契約区分 | モデル学習利用の扱い | 設定・オプトアウト方法 | サーバー保存期間(標準) | Zero Data Retention(ZDR)と例外 |
|---|---|---|---|---|
| OpenAI ChatGPT Free / Plus / Pro(個人向け) |
あり(初期設定ON) | Data Controls > Improve the model for everyone をOFF、または一時チャット利用 |
履歴削除まで保持(一時チャットは安全性監視等のため最大30日保持後に削除) | 非対応(個人プラン対象外) |
| OpenAI 法人 / API Team / Enterprise / Platform API |
なし(既定でOFF) | 初期状態で非学習(設定不要) | 標準APIは不正監視(Abuse Monitoring)用に最大30日間保持後削除(ステートフル機能は別保持) | 対応(要申請・対象エンドポイントのみ。Assistants/Files/Batchや課金メタデータは対象外) |
| Anthropic Claude Free / Pro / Max(個人向け・個人接続Claude Code) |
ユーザーの選択と現在の設定による (設定ON時は学習あり/OFF時はなし) |
オンボーディング時の選択、および Settings > Privacy の Help improve Claude トグルで随時変更可 |
学習ON時:非識別化で最大5年保持 学習OFF時:バックエンドで30日間保持(違反検知時は最大2年等、フィードバック送信分は別規定) |
非対応(個人プラン対象外) |
| Anthropic 法人 / API Team / Enterprise / API / Bedrock / Vertex |
なし(既定でOFF) | 商用規約(Commercial Terms)により初期状態で非学習 | 標準APIは安全性・不正監視のためバックエンドで最大30日間保持後削除(2026年6月9日以降、指定の「Covered Models」は原則最低30日保持) | 対応(適格なEnterprise / API顧客向けZDR特約。Covered Models[Mythos 5 / Fable 5等]は原則ZDR適用外だが、適格組織の Fable 5 / 5.1 社内業務アプリ用途には期間限定ZDR移行措置やEFSあり。非指定の通常Claudeモデルは既存ZDRが有効) |
| Google Gemini / AI Studio 個人向けGeminiアプリ / Unpaid Services規約適用時(Cloud Billing未紐づけ等) |
あり(人間のレビュアー閲覧含む) | Geminiアプリはアクティビティ設定でOFF可。Cloud Billing未紐づけのUnpaid Servicesは原則オプトアウト不可(※EEA・英国・スイス等を除く) | Geminiアプリは設定に応じ最大18〜36カ月等(レビュアー処理データは別途最大3年保持) | 非対応(Unpaid Servicesへの機密投入は公式規約で禁止) |
| Google Paid Services / Vertex AI Cloud Billing紐づけ済みのAI Studio・Gemini API / Cloud Vertex AI |
なし(既定でOFF) | 有効なCloud Billing紐づけプロジェクト(AI Studio無償利用時を含む)、Workspace Enterprise、またはVertex AI利用により初期状態で非学習 | 不正利用・安全性監視のため一時ログ保持のみ(Google検索Grounding利用時は30日間保持、ステートフルAPIは別規定) | 対応(Developer APIは非ステートフル構成で抑制可。監視ログ除外を含む厳格なZDR保証はVertex AI) |
| DeepSeek 公式 Web・アプリ(Terms of Use) / 公式API(Open Platform Terms) |
Web・アプリは既定で学習・改善利用あり (公式APIは処理委託規定) |
Web・アプリは設定(Improve the model for everyone)または privacy@deepseek.com でオプトアウト権を行使可 |
中国(PRC)国内サーバーへ保存・中国法適用(一律の自動破棄日数の明示なし) | 公式単体でのセルフサーブZDR保証は未確認(ZDRが必要なら独立ホスト第三者APIまたはローカル実行へ) |
実務者が陥りやすい「3つの契約トラップ」
-
Google AI Studio / Gemini APIの「Unpaid Services」と「Paid Services」の区分条件(単なる料金の有無ではなくCloud Billingと適用規約で決まる):
GoogleのGemini API利用規約(Gemini API Additional Terms および Data logging and sharing)では、データが学習や人間レビューに使われるかどうかは単に「実際に課金が発生したか」ではなく、どのサービス規約区分(Unpaid Services / Paid Services)が適用されるかによって決まります。請求先アカウント(Cloud Billing)が紐づいていない状態での利用は Unpaid Services となり、プロンプトや出力が機械学習の訓練および人間のレビュアーによる閲覧・注釈付けに利用されます(「機密情報や個人情報をUnpaidサービスへ送信しないこと」と明記)。一方、規約上の「Paid Services」の定義では、有効なCloud Billingアカウントが関連付けられたCloud Projectへアクセス可能なアカウントであれば、Google AI Studioを無償(free of charge)で利用する場合であっても「Paid Services」のデータ取扱条件が適用され、モデル学習には利用されません(Google Workspaceのエンタープライズアカウント利用時、およびEEA・スイス・英国のユーザーもPaid Servicesのデータ保護条件が適用されます)。さらに、Gemini Developer APIにおけるゼロデータ保持の公式文書(Zero data retention in the Gemini Developer API)では、Paid Services下でも不正監視用の一時ログ保持があるほか、Google検索/マップによるGrounding機能(30日間保存・無効化不可)やInteractions API(既定で状態保存、非保存にはstore: falseが必要)などの機能別保持条件が定められており、不正監視ログの除外を含む完全なゼロデータ保持保証が必要な場合は Vertex AI(Gemini Enterprise) の利用が案内されています。 -
Claude Code / OpenCodeにおける「個人プラン認証(設定依存)」と「商用APIキー認証」の差:
Anthropicの消費者向けプラン(Claude Free / Pro / Max)や、個人アカウントのOAuth認証で利用するClaude Codeには消費者利用規約(Consumer Terms)が適用されます。ここでモデル学習に使われるかどうかは「無条件で初期状態ON」と固定されているわけではなく、利用開始時(オンボーディングや確認ダイアログ)のユーザーの選択と、現在のSettings > Privacy内のHelp improve Claudeトグルの状態によって決まります。もしこの設定がONになっていると、それ以降の新規・再開チャットやコーディングセッションが学習対象となり、非識別化状態で最大5年間保持される可能性があるため、必ず現在のPrivacy設定がOFFになっているかを確認するか、最初から商用規約(Commercial Terms)が適用されるAPIキー/Team・Enterprise環境を利用してください(出典:Anthropic Privacy Center / Claude Code Docs - Data usage)。 -
「APIやZDRなら無条件ですべてのモデル・データが即時消滅する」という誤解(ステートフル機能とAnthropic Covered Modelsの例外・移行措置):
OpenAI APIやAnthropic APIは既定で学習利用を行いませんが、標準では不正監視用に最大30日間ログを保持します(出典:Enterprise Privacy at OpenAI)。また、申請・契約によりZero Data Retention(ZDR)を有効にした場合でも、会話履歴やファイルをサーバー側に持たせるステートフル機能(Assistants / Threads / Files / Batch等)、請求・レート制限用のトークン統計メタデータ、法令上の保存義務などはZDRでも無条件に即時破棄されるわけではありません。加えてAnthropicでは2026年6月9日以降、指定された一部の最上位モデル「Covered Models」(Claude Mythos 5/5.1、Claude Fable 5/5.1)に対して原則として最低30日間のデータ保持が義務付けられ、標準ZDRの適用外となっています。なお、Anthropicは適格な組織に限り、Claude Fable 5/5.1について社内業務アプリケーション用途で期間限定にてZDRを認める移行措置(Enterprise Frontier Safeguards への移行措置)も設けています。すべての利用者が無条件に30日保持となるわけではなく、また非指定の通常Claudeモデルには従来通り既存のZDR契約が適用されるため、NDAの条文と利用モデル・契約・適用条件を照合して使い分ける必要があります。
6. 「ローカルLLMなら100%安全」ではない理由──見落とされがちな5つの盲点
クラウドAIの規約や法域リスクを前にすると、「それなら手元のPCにローカルLLMを入れれば、無条件で100%安全になり外部送信もゼロになるはずだ」と考えがちです。
確かに、OllamaやLM Studio、llama.cpp等を用いてローカルGPU・メモリ上で推論を行えば、「推論モデル自体がプロンプトを外部サーバーへ送信して学習に回す」というリスクは構造的に排除できます。しかし、実務環境において「ローカルLLMを使っているから絶対にデータは漏れない」と断定するのは危険です。以下の5つの経路から、意図せずデータが外部へ出るケースがあるためです。
🌐 盲点1:AIエージェントの外部ツール呼び出し(Web検索・Remote MCP・外部API)
推論モデルがローカルのDeepSeekやLlamaであっても、OpenCodeなどのエージェントに「Web検索ツール(webfetch)」や「外部SaaSのMCPサーバー(GitHub、Slack、クラウドDB等)」を接続している場合、エージェントは質問に答えるためにローカルファイル内の変数名やエラーログの一部を検索クエリ・API引数に含めて外部へ送信することがあります(MCPのLocal/Remote配置による通信境界の違いは「MCPはネットワーク越しで精度が落ちる?AIとデータの「距離」から考えるLocal / Remote設計」で詳しく解説しています)。
🔗 盲点2:セッション共有機能(/share)やテレメトリ・クラッシュレポート
ローカルLLMをバックエンドに設定していても、フロントエンドのツール側でセッション共有コマンド(OpenCodeの /share 等)を実行すれば、会話履歴はクラウドへアップロードされます。また、一部のGUIクライアントやIDE拡張機能では、利用統計(テレメトリ)やクラッシュレポートの自動送信が初期設定で有効になっている場合があるため、設定画面や "share": "disabled" の明示確認が必要です。
📡 盲点3:推論サーバーのネットワークバインド設定(0.0.0.0 露出問題)
OllamaやvLLM、Open WebUIなどを起動する際、既定の 127.0.0.1(localhostのみ受付)から、LAN内の別PCから接続するために OLLAMA_HOST=0.0.0.0 等へ変更するケースがあります。この状態でカフェの公衆Wi-Fiへ接続したり、ルーターのポート開放・誤ったファイアウォール設定を行ったりすると、認証なしで外部から推論サーバーや履歴へアクセスされる重大なセキュリティリスクになります。
📦 盲点4:モデルの取得元とファイル形式(pickle vs safetensors / GGUF)
オープンウェイトモデルは誰でも再配布できるため、出所不明のリポジトリから改ざんされた重みファイルや実行スクリプトをダウンロードするリスクがあります。とくに古いPyTorchの pickle(.bin / .pt)形式はロード時に任意のPythonコードを実行できる仕組みを持つため、必ず公式または信頼できる配布元から、コード実行を含まない safetensors 形式や GGUF 形式のモデルを取得し、ハッシュ値を確認することが重要です。
🛡️ 盲点5:ローカルPC内でのエージェント暴走(Prompt Injectionと権限境界)
外部から取得したWebページやサードパーティのコード内に悪意ある指示(Indirect Prompt Injection)が埋め込まれていた場合、ローカルエージェントがそれを読み取って手元のファイルを書き換えたり、外部へ送信するコマンド(curl 等)を実行してしまうリスクがあります。ローカル実行であっても、Sandbox(隔離環境)とコマンド実行権限の制限は必須です(※具体的な隔離設計は「AIエージェントのSandboxとは?コード実行・ファイル・権限の安全設計」を参照してください)。
7. 高性能PC購入だけが答えではない──機密データを守る4つの現実的対策
ここまで見てきた通り、AIのデータプライバシー対策は「クラウドをやめて高価なGPU搭載PCを買えばすべて解決する」という単純な話ではありません。扱うデータの機密レベル、求めるモデルの知能水準、そして予算に応じて、次の4つの対策を段階的に組み合わせることが最も合理的です。
| 対策アプローチ | 導入コスト | 利用できるモデル性能 | 防げるリスクと限界 |
|---|---|---|---|
| ① データの匿名化・抽象化 (マスキング・ダミー置換) |
¥0(運用ルールのみ) | 最高峰のクラウドAIをそのまま利用可能 | 顧客名・APIキー・固有ロジックを伏せて質問できる場合は最も手軽。ただしリポジトリ全体を読ませるエージェント用途には限界あり |
| ② 商用API / 法人契約 / ZDR設定 (Paid API・Team・Enterprise) |
従量課金または月額数千円〜 | GPT・Claude・Gemini・671Bモデル等の最上位知能 | モデル学習への流用を契約・システムで防止。さらにZDR適用で30日ログ保持も回避可能(ただしクラウドへの通信自体は発生する) |
| ③ エージェント権限制限・Sandbox隔離 ( opencode.json・Docker等) |
¥0(設定・環境構築のみ) | クラウド/ローカル問わず併用可能 | *.env の読み取り拒否、"share": "disabled"、シェル実行の承認制により意図しないシークレット読み取りや誤共有を抑止。ただし個別権限の制限であり全流出経路を遮断する保証ではないため、Sandbox隔離や契約統制との併用が必須 |
| ④ ローカルLLM実行・ハイブリッド構成 (手元GPU / 大容量メモリPC) |
ハードウェア投資が必要 (既存PC活用〜専用機導入) |
手元のVRAM / ユニファイドメモリ容量に依存(7B〜70B+クラス) | 外部ネットワークへ一切出せない機密データ・未公開資産を、通信遅延やAPI従量課金なしで手元処理できる最終防衛ライン |
どのような場合に「ローカル環境(手元の計算資源)」を選ぶべきか?
一般的なコード補完や公開ライブラリの実装相談であれば、まずは「② 商用APIキー(非学習保証)+ ③ OpenCodeの権限制限(.env拒否・share無効化・コマンド承認制)とSandbox隔離」から始めるのが最も低コストかつ高効率です。
そのうえで、次のような条件に当てはまる場合に初めて、手元のPCでローカルLLMを動かす構成(または機密ファイル処理だけをローカルモデルへ振り分けるハイブリッド構成)が現実的な投資対象になります。
- クライアントとの契約や社内規定により、いかなる契約形態であっても外部クラウドサーバーへデータを送信・一時通過させること自体が禁止されている場合
- 未発表の研究データ、独自の学習用データセット、個人の創作資産やプライベートな思考ログなど、「プラットフォーム側の規約変更に将来わたって依存したくないデータ(データ主権)」を扱う場合(※計算資源を手元に持つことの本質的な意味は「AI時代に、「計算資源を所有する」ということ。」で考察しています)
- AIエージェントに大量のローカルファイルを24時間反復処理させたいが、クラウドAPIのトークン従量課金やレート制限を気にせず定額で回し続けたい場合(※ChatGPT・ClaudeなどのクラウドAIからローカルLLMへ置き換えやすい業務範囲と必要なPCは「ローカルLLMはChatGPT・Claudeの代わりになる?2026年の実力と必要なPC」、月間利用時間別の詳細な損益分岐点は「クラウドGPUとローカルPCはどっちが安い?月40・120・240時間の損益分岐点【2026年】」で解説しています)
なお、実際にローカルLLMでDeepSeekの蒸留モデル(8B / 14B / 32B / 70B等)やコーディングモデルを動かす際に「何GBのVRAMやユニファイドメモリが必要になるか」という具体的なハードウェア選定基準については、本記事とは役割を分け、「ローカルLLM用GPUは何GB必要? 16GB・24GB・32GB VRAMの境界を考える【2026年版】」および「AIエージェントはローカルで動かすべき?クラウドAgentとの違いと使い分け」で詳しく解説しています。
8. 公式一次情報・規約確認先一覧(2026年10月18日確認)
AIサービスの利用規約やデータ保持ポリシーは改定されることがあります。実務導入や組織内でのガイドライン策定にあたっては、必ず以下の公式一次情報(原典)を併せてご確認ください。
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OpenCode / OpenCode Zen(Console・Go)公式ドキュメント
ツールの権限制御(
permission・.env保護)、設定ファイルでの共有制御(share)、およびZen / Goにおけるモデル別データ保持期間・学習利用・提供元一覧: https://opencode.ai/docs/permissions/ / https://opencode.ai/docs/config/#share / https://opencode.ai/docs/zen/ / https://opencode.ai/v2/docs/console/go/#privacy -
DeepSeek 公式規約(Web・アプリ/公式API)および個人情報保護委員会(PPC)一次情報
Web・アプリ利用規約(第4.3条オプトアウト規定)、プライバシーポリシー(中国国内サーバー保管・Your Rights・
privacy@deepseek.com)、公式API規約(Open Platform Terms)、および日本の個人情報保護委員会による注意喚起: https://cdn.deepseek.com/policies/en-US/deepseek-terms-of-use.html / https://cdn.deepseek.com/policies/en-US/deepseek-privacy-policy.html / https://cdn.deepseek.com/policies/en-US/deepseek-open-platform-terms-of-service.html / https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/250203_alert_deepseek/ - OpenAI Enterprise Privacy & API Data Controls API・Team・Enterpriseにおける非学習規定、30日間のAbuse Monitoringログ保持、Zero Data Retention(ZDR)の対象エンドポイントとステートフル機能の例外: https://openai.com/enterprise-privacy/ / https://developers.openai.com/api/docs/guides/your-data
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Anthropic Privacy Center・Claude Code Data Usage・Covered Models・Commercial Terms
消費者プラン(Free/Pro/Max)における
Help improve Claude設定と保持期間、商用APIの30日保持・ZDR特約、および2026年6月9日適用の「Covered Models」における最低30日保持規定・適格組織向けFable 5 / 5.1期間限定ZDR移行措置・Enterprise Frontier Safeguards: https://privacy.claude.com/ / https://code.claude.com/docs/en/data-usage / https://support.claude.com/en/articles/15425695-covered-models / https://privacy.claude.com/en/articles/15425996-data-retention-practices-for-covered-models / https://www.anthropic.com/legal/commercial-terms - Google Gemini API Additional Terms・Developer API ZDR & Logs Policy・Vertex AI Data Governance AI Studio / Gemini APIにおけるUnpaid ServicesとPaid Services(Cloud Billing紐づけ条件)の規約区分、Gemini Developer APIのZero Data Retention(ZDR)とログ保持仕様、およびVertex AIのデータガバナンス: https://ai.google.dev/gemini-api/terms / https://ai.google.dev/gemini-api/docs/zdr / https://ai.google.dev/gemini-api/docs/logs-policy / https://cloud.google.com/vertex-ai/generative-ai/docs/data-governance
- OpenRouter Data Collection & Zero Data Retention 第三者推論プロバイダー利用時のデータ収集ポリシーおよびZDRエンドポイント限定ルーティング仕様: https://openrouter.ai/docs/guides/privacy/data-collection / https://openrouter.ai/docs/guides/features/zdr
まとめ:ツールの評判ではなく「データの通り道と契約条件」を設計する
AIに預けたデータが安全かどうかは、ツールの知名度やイメージでは決まりません。①手元のエージェントにどの権限(permission・share)を与えているか、②どの提供経路(公式サーバー・独立ホストの第三者ZDR API・ローカル実行)を通っているか、③どの契約区分と設定(個人向けPrivacy設定・商用API・ZDR特約と対象モデル/エンドポイント)が適用されているかの3点を揃えて初めて、情報漏洩リスクを自分のコントロール下に置くことができます。
漠然とした不安でAI活用を止める必要も、無防備に機密データを渡す必要もない。
「このデータは、どの境界線の内側で処理すべきか」を自分で決められること。
それがAI時代における最も実践的なデータガバナンスであり、環境選びの出発点になります。
よくある質問
OpenCodeを使うとソースコードが勝手に外部へ学習提供されますか? +
OpenCode自体は手元のPCで動作するオープンソースのAIエージェント(ハーネス)であり、設定した接続先APIやローカルモデルへ直接通信します。自前の商用APIキーやローカルLLM(Ollama等)を接続している場合、OpenCode側が勝手にソースコードを収集してモデル学習に回す仕組みではありません。ただし、公式ゲートウェイのOpenCode Zen(Console / Go)を利用する場合は「有料=無条件でZDR、無料=すべて学習利用」という単純な区分ではなく、モデルおよび上流プロバイダーごとに保持期間(0日または30日等)と学習利用の有無が個別に定められています(2026年10月18日時点の確認情報)。たとえば無料モデルでも0日保持・非学習のもの(GLM-5.3-Flash FreeやDeepSeek V4.1 Flash Free等)がある一方、トライアル無料モデル(Big Pickle、Exo Free、Nemotron Free等)や有料サブスクリプション内のContributor枠モデル(Gemini 4 Argon Contributor、Muse Spark Contributor等)では学習・製品改善への利用が明記されています。モデルの追加・提供終了や月次更新のZDR契約変更が起こり得るため、利用時は必ず公式のPrivacy表を再確認し、併せて/shareコマンドによる外部共有を無効化しておくことが重要です。
DeepSeekは危険だから一切使わない方がいいのでしょうか? +
「DeepSeek」という言葉が指す対象を3つの利用経路に分けて判断する必要があります。第一に、DeepSeek公式Web・アプリ(Terms of UseおよびPrivacy Policy適用)と公式API(Open Platform Terms of Service適用)は、運営主体のHangzhou DeepSeekにより中国(PRC)国内のサーバーへデータが保管され中国法域の対象となります。公式規約上は設定画面(Improve the model for everyone)や連絡窓口(privacy@deepseek.com)による学習利用のオプトアウト権が定められていますが、オプトアウトしてもサーバー所在地や適用法域は変わらないため、日本の個人情報保護委員会(PPC)の注意喚起を踏まえても機密情報や個人情報の入力は避けるべきです。第二に、第三者プロバイダー経由は「独立ホスティングかルーティング中継か」の確認が必須です。AWS BedrockやGoogle Cloud Vertex AI等が自社の米・欧・日リージョンGPU上でオープンウェイトを独立ホスティングしている場合はDeepSeek社へ送信されませんが、OpenRouter等のアグリゲーターでは設定次第で公式APIやログ保持プロバイダーへ転送される場合があるため、ZDR限定ルーティング等の設定が不可欠です。第三に、重みファイルを取得し手元のPC(Ollamaやllama.cpp等)でローカル実行する場合は、推論データ自体を外部へ送らずに利用できます。
有料プラン(ChatGPT PlusやClaude Pro)なら機密データを入れても学習されませんか? +
「有料プランだから自動的に非学習になる」とは限りません。個人向けプラン(Consumer)ではサービスやユーザーの選択状況によって学習利用の扱いが異なります。OpenAIのChatGPT(Free / Plus / Pro)は初期状態でモデル改善利用が有効であり、Data Controlsからオプトアウト(または一時チャット利用)が必要です。AnthropicのClaude個人プラン(Free / Pro / Max、および個人アカウントで認証したClaude Code)は、初期状態で一律ONと断定されるものではなく、オンボーディング時の選択および現在のPrivacy設定(Help improve Claude)の状態に応じて決まります(ON時は非識別化で最大5年保持、OFF時は標準30日保持)。いずれも個人プランではサーバー側での一定期間の保持が残るため、初期状態での非学習保証や組織的なガバナンスが必要な業務では、Team / Enterpriseプランまたは商用API契約を選択するのが原則です。
APIの「Zero Data Retention(ZDR)」とは、無条件で一切記録が残らない仕組みですか? +
いいえ、「標準API=ZDR」ではなく、また「あらゆるデータが無条件で即時消滅する」という意味でもありません。まず標準の商用API(OpenAI APIやAnthropic API等)は既定で学習には利用されませんが、不正利用監視(Abuse Monitoring)のため最大30日間入出力ログを保持します。ZDRはこの30日間の監視用プロンプト・出力ログを保存せずレスポンス返却後に破棄する特約・構成ですが、主な例外・保持対象があります。第一に、ステートフル機能(Assistants / Threads、Files、Batch、Gemini Developer APIのInteractions API既定保存やGoogle検索Groundingの30日間保存等)は機能上サーバー保存が必要でありZDRの対象外(または利用制限・設定変更が必要)となります。第二に、Anthropicでは2026年6月9日以降、指定された一部の最上位モデル「Covered Models(Claude Mythos 5 / 5.1、Claude Fable 5 / 5.1)」に対して原則として最低30日間のデータ保持が義務付けられ標準ZDRの適用外となっていますが、適格な組織に限りClaude Fable 5 / 5.1を社内業務アプリケーション用途で期間限定にてZDR利用できる移行措置(Enterprise Frontier Safeguardsへの移行措置)も設けられています。したがってすべての利用者が無条件に30日保持となるわけではなく契約・適用条件の確認が必要であり、また非指定の通常Claudeモデルには従来通り既存のZDR契約が適用されます。第三に、トークン消費量・リクエスト時刻・APIキー識別子などの課金・運用メタデータや法令上の保存義務は保持対象となるため、対象モデル・エンドポイントと契約条件を個別に確認することが重要です。
ローカルLLMを導入すれば、情報漏洩リスクは完全にゼロになりますか? +
推論処理そのものが手元のGPUやメモリ内で完結する点は大きな強みですが、「ローカルLLM=無条件に外部送信ゼロ」とは言い切れません。AIエージェントにWeb検索ツールや外部MCPサーバーを接続した場合、OpenCode等でセッション共有(/share)を実行した場合、推論サーバーを0.0.0.0でバインドして外部ネットワークへ公開してしまった場合、あるいは出所不明なモデルファイルを実行した場合などにはリスクが生じます。ネットワーク設定とエージェント権限の管理を併用することが不可欠です。